海外種牡馬だと2018年はフランケルに続いて二位
2019年はすでにフェブラリーステークス(GⅠ)も終わり、先日の中山記念(GⅡ)ではGⅠホース五頭が登場してくるなど、いよいよ活気づいてきました。
三月の後半には2019年の芝レース最初のGⅠ高松宮記念(芝1200m)が行われますが、今週はそのステップレースとなるオーシャンステークス(GⅢ、芝1200m)が中山競馬場で開催されます。
想定の一番人気にはモズスーパーフレアが押されているようですが、この馬の父はSpeightstown(スパイツタウン)という馬です。
何となく見る名前だなと思って2018年の種牡馬ランキングを調べたところ、ランキングは61位ながら丸外馬(海外種牡馬)ではFrankel(フランケル)の57位に次ぐ二位でした。
現在オープンクラスのレースに出てくる馬にはリエノテソーロやマテラスカイなどもおり、2019年に二歳となる産駒は少なくともすでに八頭(過去最大?)が確認できます。
そこで今回は最近日本で注目の海外種牡馬Speitstown(スパイツタウン)に注目してみたいと思います。
※この記事は2019年2月に書かれた記事となりますが、産駒成績などはなるべく最新の情報に更新していくので一部整合性の取れない部分が出てくることを予めご了承ください。
スパイツタウンの血統
Speightstown 1998年2月1日 アメリカ産
父
Gone West 1984 鹿毛 |
父の父
Mr.Prospector1970 鹿毛 |
Raise a Native | Native Dancer | |
Raise You | ||||
Gold Digger | Nashua | |||
Sequence | ||||
父の母
Secrettame1978 栗毛 |
Secretariat | Bold Ruler | ||
Somethingroyal | ||||
Tammerett | Tim Tam | |||
Mixed Marriage | ||||
母
Silken Cat 1993 栗毛 |
母の父
Storm Cat1983 黒鹿毛 |
Storm Bird | Northern Dancer | |
South Ocean | ||||
Terlingua | Secretariat | |||
Crimson Saint | ||||
母の母
Doll1980 鹿毛 |
Chieftain | Bold Ruler | ||
Pocahontas | ||||
Insilca | Buckpasser | |||
Copper Canyon |
父はGone West(ゴーンウエスト)は80年代後半にアメリカで走り、ドワイヤーステークス(GⅠ、ダート9F)を勝つなど17戦6勝(6-4-2-5)の成績を残した一流馬です。同世代にはAlysheba(アリシーバ)やGulch(ガルチ)がいます。
種牡馬となってからは、アメリカを中心に多くの活躍馬を多く送り出し、トップクラスの種牡馬成績を残しています。現役時代よりも繁殖入りしてからその存在感を示しました。
産駒の多くは祖父ミスタープロスペクター譲りのスピードで、2歳戦から活躍する産駒を多く送り出し、大レースでの勝利はほぼ2歳から3歳に集中しています。
また、超大物というよりも、高い勝ち馬率で平均的に走しる馬を出すタイプであり、この系統の最大派閥とも言えるElusive Quality(イルーシヴクオリティ)の系統なども、勝ち馬率は高いが大きな重賞になると頭打ちになる馬が多く、ゴーンウエスト産駒も似たような傾向を示しています。
2018年のNHKマイルカップで一番人気(12着)だったタワーオブロンドンがイルーシヴクオリティ系のRaven’s Pass(レイヴンズパス)の子供でしたが、このレース以降は一気に大物感が消えており、いかにもこの系統というような成績を残し始めていますね。
スパイツタウンの母系は母のSilken Cat(シルケンキャット)自身がカナダの2歳牝馬チャンピオンで、スパイツタウンの弟のIrap(アイラップ)もアメリカのGⅡを勝っています。
母系をさかのぼると、Buckpasser(バックパサー)やStorm Cat(ストームキャット)など一流種牡馬が配合されており素性の良さがうかがい知れます。ただ、(僕が調べた限り)近親に超一流馬がいるわけではありません。
母の父ストームキャットは直系だと不器用な早熟のスピード馬が多いのですが、よく知られているように母の父としては数々の一流馬を送り出しており、底力のある」信頼できる種牡馬と言えますね。
また、直系がスタートからガンガン行くタイプが多いのに対して、母の父に入ると総じて決め手のするどい一流馬が多い不思議な種牡馬です。同じような種牡馬としてDeputy Minister(デピュティミニスター)の系統が似たような傾向を示しています。
血統の全体的な印象として、母の父としてストームキャットの存在はは心強いところなんですが、ゴーンウエストの系統も”下級条件でこそ強い”という中々主張の強い血筋なので、こちらのほうを色濃く受け継いでいる印象はあります。
血統構成だけ見ると、仕上がりは早いタイプであり、距離面に関してはスタミナの血がないのでやはりマイルあたりまでがベストという距離に限界があるスピードタイプの種牡馬という感じになります。
現役時代
16戦10勝(10-2-2-2) 2004年エクリプス賞(北米)チャンピオンスプリンター
主な勝ち鞍:ブリーダーズカップスプリント(GⅠ、ダート6F)、他GⅡを三勝
2000年にデビュー。血統構成から推測すると下級条件に強い早熟の短距離馬という印象になりますが、Speightstownは6歳に充実期を迎えてGⅠであるBCスプリントを勝利しています。
血統的には適性期である三歳時に二度にわたる骨折で二年近い長期休養をしており、五歳時も二戦しかしていません。
早い時期に消耗しなかったのが功を奏したのか六歳時に重賞を四勝しています。
二歳時・・・1戦0勝
三歳時・・・7戦5勝
五歳時・・・2戦1勝
六歳時・・・6戦5勝:BCスプリント(GⅠ)
北米での種牡馬成績
産駒は2010年から大活躍しており、2015年まで五年連続でトップ10に入り、今も20位以内をキープするなどアメリカのトップ種牡馬の一頭です。
特に2013年はトップのKitten’s Joy(キトゥンズジョイ)に約8万ドル差まで肉薄していました。
全体的には勝ち馬率が高く、賞金に占めるダートの構成率がかなり高くなっています。大物はダート馬ということが言えます。
2019年・・・8位(芝15位、賞金構成率36%)
2018年・・・15位(芝32位、賞金構成率28%)
2017年・・・18位(芝23位、賞金構成率32%)
2016年・・・16位(芝28位、賞金構成率28%)
2015年・・・8位(芝14位、賞金構成率37%)
2014年・・・9位(芝30位、賞金構成率24%)
2013年・・・2位(芝28位、賞金構成率11%)
2012年・・・3位(芝23位、賞金構成率20%)
2011年・・・7位
2010年・・・10位
2009年・・・32位
2008年・・・不明
主な活躍馬
※2019年2月までのデータを元にしています。
Load Shanakill(ロードシャナキル)
母の父:Theatrical(Nureyev系) 母の母の父:Blushing Groom
2006年アメリカ産のイギリス調教馬。
フランスのシャンプラ賞(GⅠ、芝1600m)など18戦5勝(5-2-5-6)。
マイル以下を中心に使われ他にGⅡを二勝していますが、全体的に善戦しているものの英2000ギニーやBCスプリントなどではそれぞれ12着に敗れるなど相手が強くなると通用していません。
他のGⅠでも三着が最高など、大物感には欠けます。
種牡馬入りしていますが、代表産駒でプリンスオブウェールズS(GⅠ、芝10F、このレースには凱旋門賞を勝った名牝Foundも出走しています)を勝っているMy Dream Boat(マイドリームボート)も、詰め切れないレースばかりしています。
妹は英オークス馬Forever Together(フォーエバートゥギャザー)。
Haynesfield(ヘインズフィールド)
母の父:Tejabo(Vice Regent系) 母の母の父:Apalachee(Round Table系)
2006年アメリカ産。アメリカで走り19戦10勝(10-2-1-6)。
主な勝ち鞍に四歳時にジョッキークラブゴールドカップステークス(GⅠ、ダート10F)があるものの重賞は他にGⅡを一勝したのみ。
GⅠに限定すると他は善戦どまりでBCクラシックでは大敗しているなど、あくまで上級馬の一頭という感じで、勝ち星の大半は下級条件です。
ただ10F戦でのちにBCクラシックに勝利するBlame(ブレイム)に勝利しているのは評価できます。
ロードシャナキル同様4着や5着が多いですね。
Tamarkuz(タマークズ)
母の父:Lemon Drop Kid(Kingmambo系)母の母の父:Storm Bird
2010年アメリカ産。UAEやヨーロッパで走った後、アメリカに移籍。
六歳時のBCダートマイル(GⅠ、ダート8F)で勝利するなど20戦8勝(8-4-0-8)。
アメリカで走った五歳夏以降は引退レースこそ勝ったものの、全体的に善戦どまりでした。
Competitionofideas(コンペティションオブアイデアズ)
母の父:Medaglia d’Olo(Saddlers Wells系) 母の母の父:Devil His Due(Devil’s Bag系)
2015年アメリカ産。
2018年のアメリカンオークス(GⅠ、芝2000m)を勝利しています。
このレースはかつて日本のシーザリオが勝つなど格式の高いレースでしたが、2015年から開催時期が移されたこともあり、重要度はそれほど高くないレースのようです。
その後も安定した成績を残していますが、未勝利だったようですね。
リエノテソーロ
母の父:Langfuhr(Danzig系) 母の母の父:Gulch
2014年産。
2歳時は4戦4勝(地方2勝含む)。3歳になってアネモネステークス(OP、芝1400m)で4着に終わり、やはりダート馬だったかと思われましたが、13番人気だったNHKマイルカップで2着に激走。
うっかり芝で成績を残してしまったせいか、それ以後迷走が続いています。
芝の多きなレースでも最近までそれほど大負けはしていなかったんですが、3歳以降は地方で一勝のみと陣営も適性条件がまだ把握できていない感じですね。
個人的にはいまだにNHKマイルCの2着が謎です(笑)。
母の父Langfuhr(ラングフール)はカナダの一流種牡馬ですね。
マテラスカイ
母の父:Rahy(Blushing Groom系) 母の母の父:Diesis(エタン系)
2014年生まれの現役馬で、2018年のプロキオンステークス(GⅢ、ダート1400m)は1分20秒3という好タイム(不良馬場)で完勝しています。
この馬の特徴は何と言ってもスピードですが、勝つときは物凄く強い勝ち方をするのに、自分のペースで行けないと自己条件であっさり負けるなどムラが目立ちます。
古馬になってからのほうが活躍していますが、どこか大物感はないですね。
ドバイで行われたドバイゴールデンシャヒーン(GⅠ、ダート1200m)や2020年サウジアラビアで行われたサウジアスプリント(格付けなし、ダート1200m)で二着に好走しているものの、その間の日本のレースでは馬券に絡めていないなど、この系統らしい成績を残しています。(2020年3月2日追記)
モズスーパーフレア
母の父:Belong to Me(Danzig系) 母の母の父:Valid Appeal(In Reality系)
2015年産。まだ重賞未勝利ですが、すでにオープンクラスで勝つなどこれからの活躍が期待されている馬です。
三歳時はあまりパッとしない馬でしたが、四歳になって逃げるようになってから成績が安定してきました。
好走する時は33秒ぐらいのそこそこ早めのペースで行っていることがほとんどなので、前述のマテラスカイと同様、下手に抑えるよりどんどん行ったほうがいいタイプですね。
母系からダートにも適性がありそうですが、今のところ芝のレースしか走っていませんね。
2019年にオーシャンS(GⅢ、芝1200m)で重賞初勝利を果し、その後スプリンターズS(GⅠ、芝1200m)ではタワーオブロンドンンの二着に入っています。スプリンターズS前後では人気を背負ってコロッと負けるなどいかにもスパイツタウン産駒という成績をのこしていますね。(2020年3月2日追記)
2020年九番人気ながら高松宮記念を制し、日本での産駒のうれしい中央GⅠ初勝利となりました。(2020年3月30日追記)
フルフラット
母の父:Medaglia d’Oro 母の母の父:Blushing Groom
2017年産。
1勝馬の身でありながらBCジュブナイルに挑戦し九頭立ての五着に終わりました。
その後1勝クラスを二着に終わった後サウジアラビアで創設されたサンバサウジダービーでは低人気の評価を覆して見事勝利しています。
(2020年3月2日追記)
産駒の傾向と特徴
高い勝ち馬率も、新馬戦・未勝利戦は人気馬が勝っている
スパイツタウンの特徴はなんといっても高い勝ち馬率です。
2019年2月26日現在23頭がデビューしていますが、勝ち馬頭数は18頭で驚きの78.3%です。先月の新馬戦ではベストマジック(手塚きゅう舎)が二着だったので、おそらくこの馬も勝ち上がってくるでしょうし、八割越えは目前という驚きの内容ですね(ちなみに日本のトップ種牡馬で四割ぐらい)。
しかしながらこのカラクリは簡単で、”〇外馬”つまり走る馬を買ってきている(ある程度買う前に確認できる)ので当たり前だとも言えます。
実際に日本で走っているアメリカで繋養されているの種牡馬の産駒の勝ち馬率は六割から七割ぐらいなので、平均よりちょっと上、サンプルも少ないのでそこまでは信頼できません。
ただ、ここで逆説的にアプローチするとあることが見えてきます。
それは”どんな馬が勝ちあがれなかったか?”ということです。
僕が調べた限り五頭が勝ち上がっておらず、思ったほど新馬戦では圧倒的な強さを誇っているわけではないのですが、共通する点は一点。
新馬戦・未勝利戦は人気薄だと勝っていないということです。
新馬戦や未勝利戦で勝った時の人気を見ると8-4-1-3、四番人気以下だと五番人気、六番人気、七番人気がそれぞれ一頭づつなので、人気のない馬は狙えない、と言えます。
人気薄を狙うならもっと上の条件ですね。
1600m以上は不振とも言えるレベル
ほとんどの馬が1400m以下のレースに出走しているのでサンプル数は少ないのですが、二着が数回あるぐらいでほとんど勝っておらずまったく信用できません。
切れ味というよりもスピードの絶対能力で勝負するタイプであり、忙しい距離、レース展開のほうが合っていると言えます。
勝ち馬の平均距離も芝・ダートともに1200m台と完全にスプリンター型ですね。
大物感はないが、じわじわと上のクラスにやってくる
充実期は上級条件でもあまり大敗することがなく、血統の割には古馬になってもしぶとく勝っている馬も見受けられます。
連敗して少し人気を落としてポロっと勝つなど、早い見限りは禁物です。
ただ、リエノテソーロのように実績馬が血統的に得意なはずの短距離やダートで人気して凡走するなど、過去の実績にとらわれ過ぎるのは禁物で、やはり調子を重視するタイプの種牡馬・血統だと言えます。
海外の実績馬を見ても一流半までが限界という感じでそれほど底力はないでしょうね。
人気馬を軸にするのは危険
下級条件だと人気に応えて勝つことが多い馬ですが、ある程度条件が上がってきたときにコロッと負けることがあります。
前向きなレースをする馬が多いせいもあり、僅差負けや大負けというよりも粘れず4着5着というケースが多いので、人気した時に絶対的な信頼は置きにくい種牡馬です。
降級はあまり信用できず?
スパイツタウン産駒の人気で飛んでいるパターンを調べてみると、いくつか見られたのが前走大敗しているのに人気しているパターン、ズバリ降級している時が多いような気がします。
そう言えばリエノテソーロについても当てはまりますが、調子が悪く相手が弱くなる時よりも、充実期に上の条件(といっても中級条件ですが・・・)で狙うほうがおいしい感じがします。
当然、芝からダートや、距離短縮は狙えますね。