ハーツクライ産駒の特徴と傾向



超一流馬はディープではなくハーツクライから生まれる?

ハーツクライと言えば、現役時代は同期にキングカメハメハ、一つ上にはゼンノロブロイ、そして一つ下にはディープインパクトという超一流馬がいたため、記録に残るような馬ではありませんでした。

結果的にGⅠレースは有馬記念(2005年)とドバイシーマクラシック(2006年)を制していますが、どちらかと言えばGⅠでは少し足りない、わき役の印象が強い馬でした。実際に振り返ってみても一番人気になったのは新馬戦と菊花賞の二回のみです。

僕のようにリアルタイムでレースを見てきた人たちにとっては、”絶対王者”ディープインパクトを国内調教馬として唯一破った馬、この印象がやっぱり強いでしょうね。

現役時代はあくまで二番手、三番手の馬だったハーツクライですが、やはり現役時代よりも種牡馬入りしてからのほうがその存在感があるのは間違いないでしょう。重賞レースで子供たちが不動のリーディング種牡馬ディープインパクト産駒とともに、人気を分け合うのはもはや見慣れた光景になっています。

またリーディング順位こそディープインパクトの後塵を拝してはいますが、重賞レースで頭打ち感のある馬の多いディープインパクト産駒に比べて、何かやってくれそうな感があるのはハーツクライ産駒のほうが多いのではないのでしょうか。

クラシックシーズンが終わると一気に老け込む印象のあるディープインパクト産駒に対して、ハーツクライ産駒はこの時期から本格化してくる馬もいて、スケール感では全く遜色がないどころか、牡馬に限定すると古馬になってからはどちらがリーディング種牡馬か分からない感じもします。

昨年までの絶対王者だったキタサンブラックを破ったのがディープインパクト産駒ではなくハーツクライ産駒のシュヴァルグランだったのもいい例ですが、今回は””刺客””ハーツクライについてフォーカスしてみたいと思います。

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ハーツクライの血統

*サンデーサイレンス
Sunday Silence 1986
青鹿毛 アメリカ

父の父

Halo 1969
黒鹿毛 アメリカ

Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
父の母

Wishing Well 1975
鹿毛 アメリカ

Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss

アイリッシュダンス 1990
鹿毛 北海道千歳市

母の父

*トニービン
Tony Bin 1983
鹿毛 アイルランド

*カンパラ
Kampala
Kalamoun
State Pension
Severn Bridge Hornbeam
Priddy Fair
母の母

*ビューパーダンス
Buper Dance 1983
黒鹿毛 アメリカ

Lyphard Northern Dancer
Goofed
My Bupers Bupers
Princess Revoked

父サンデーサイレンスは90年代日本競馬を根底から変えた大種牡馬であり、短距離から長距離、芝でもダートでも活躍する馬を送り出すなど、母系の特徴を活かしながら鋭いスピードを子供に伝えるのが特徴でした。

鋭い末脚を誇ったディープインパクトもいれば、レースセンスや小気味良いスピードを武器としていたフジキセキやジェニュインなど様々なタイプの馬を送り出しています。

母アイリッシュダンスは遅れてきたトニービンの大物(当時はかつてのノーザーンテーストの次世代を担う種牡馬の筆頭でした)として期待されました、結局新潟記念(GⅢ)など重賞を2勝するのみにとどまりましたが、トニービンの武器である鋭い末脚が特徴(当時の評価)でした。

母系は遡ると母(ハーツクライから見ると祖母)ビューパーダンスの全兄が種牡馬にもなったリファーズスペシャルなどの他、愛オークス馬Winona(父Alzao)や米エイコーンステークスの勝ち馬ステラマドリッド(父Alydar)を出すなどかなりの活躍馬がおり、質の高い牝系だと言えます。

血統的にはスプリント戦で活躍するような爆発的なスピードをもった馬がいませんが、トニービンからはするどい決め手とスタミナ、リファールからは高い身体能力と底力などを受け継ぎかなりバランスのいい配合に感じます。トニービンとノーザンダンサー系の相性がいいのも有名な話ですね。

ベガやウイニングチケット、エアグルーヴなどトニービンの一流馬はほぼこのニックス配合となっています。

母アイリッシュダンスの戦績ややハーツクライ自身の活躍が古馬になってからだと考えると産駒は晩成タイプが多くなると想像できます。

現役時代

通算成績は19戦5勝。国内のみだと17戦4勝、海外では2戦1勝。

3歳時は10戦3勝で末脚はしっかりしているものの先行力が足らず詰め切れないレースや不安定なレースが続きました。日本ダービーに2着に来ているのは流石といったところですが、この時の勝ち馬は歴代でも最強レベルのダービー馬の一頭に数えられるキングカメハメハだったのは運がなかったと言えますね。

4歳になって本格化してGⅠレースでの好走が目につき始めましたが、脚質的にも今一歩詰め切れず、勝った有馬記念とドバイシーマクラシックはどちらも一転先行してのものでした。このあたりから考えると若いうちは若干スピードに欠けていたことが分かります。

主な勝鞍はディープインパクトを破った有馬記念(GⅠ)、ドバイシーマクラシック(GⅠ)、京都新聞杯(GⅡ)。2着には日本ダービー(勝ち馬キングカメハメハ)、ジャパンカップ(勝ち馬アルカセット)などがありますが、存在能力は感じさせたものの、意外と脆さを持ち合わせていた馬でしたね。

レースでの印象は母アイリッシュダンスに似て鋭い末脚を武器にした上級馬の一頭という印象でしたが、超一流という感じはなかったですね。

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主な産駒

ジャスタウェイ

母の父:Wild Again(Icecapade系)

2009年産。22戦6勝(6-6-1-10)で主な勝鞍に天皇賞・秋、安田記念、ドバイデューティーフリーなどがありGⅠ三勝。

二歳や三歳時からそこそこの活躍はしていましたが、四歳の秋に本格化して一気に一流馬の仲間入りしました。特徴は鋭い決め手でした。

重賞での2着が6回あるものの、勝ったレースを除いた残り10戦で3着が一回しなかないのは面白いところですね。

母の父はWild AgainでIcecapadeの系統ですが、母系にはノーザンダンサーやミスタープロスペクターなどの血がなく、かなり異系色が強くなっています。

ワンアンドオンリー

母の父:タイキシャトル

2011年産。通算成績は33戦4勝(4-3-1-25)で主な勝鞍に日本ダービー(GⅠ)、神戸新聞杯(GⅡ)。

皐月賞4着のあと3番人気で挑んだ日本ダービーを勝利しましたが、秋の神戸新聞杯を勝ったあとは不振を極め、翌年のドバイシーマクラシックの三着を最後に複勝圏内に入ることさえなくなりました。

典型的な早熟馬の傾向でした。

母の父は最強マイラーの一頭にも数えられるタイキシャトル(Halo系)であり、母系はDanzig(ダンジグ)やMr Prospector(ミスタープロスペクター)などがならび、かなりスピードよりで燃え尽きやすい血統の多い配合になっています。

ヌーヴォレコルト

母の父:スピニングワールド(Nureyev系)

2011年産。22戦6勝(6-6-1-10)で主な勝鞍にオークス(GⅠ)、ローズステークス、中山記念(GⅡ)などがありますが、GⅠでの2着が四回、3着が一回とどちらかと言えば善戦タイプでした。

母の父はヌレイエフ系のスピード種牡馬スピニングワールドでさかのぼるとダンジグ系のChief’s Crown(チーフズクラウン)やミスタープロスペクターなどこちらもかなりスピードに寄った配合になっています。

シュヴァルグラン

母の父:Machiavellian(ミスタープロスペクター系)

2012年産の現役馬となります。2017年までの成績は23戦7勝(7-5-6-5)で主な勝鞍は2017年のジャパンカップなど重賞3勝。

昨年念願のGⅠ勝ちにより一皮むけた印象はありますが、GⅠ限定だと1-1-4-2.GⅡとGⅢでは2-2-2-2(平場では4-2-1-0)と印象ほど活躍はしていません。

母の父はミスタープロスペクター系でヨーロッパでも短距離で活躍馬を送り出すマキャベリアン。さかのぼるとヌレイエフやBlushing Groom(ブラッシンググルーム)が配合されており、ヨーロッパ的なスピードとともに底力や潜在的なスタミナも備えている配合です。

ただ、この馬の場合姉ヴィルシーナ、妹ヴィヴロス(ともに父はディープインパクト)がいるようにお母さんの底力の影響を多分に受けているような気はします。

タイムフライヤー

母の父:ブライアンズタイム

2015年産の現役馬。2017年までの成績は5戦3勝2着一回で主な勝鞍はホープフルステークス(GⅠ)。

まだまだ三歳になったばかりの馬ですが、この馬はハーツクライ産駒で東京競馬場以外のGⅠを勝った初めての馬となります(国内限定)。

母の父はパワーと決め手を備えたブライアンズタイムでありGⅠでの強さがやっぱり有名ですね。さかのぼるとリファール系Alzao(アルザオ)にBold Ruler系のボールドラッドなどどちらかと言えばバワーよりの配合になっていますね。

前述の三頭ほどのスプリント血統がないのが特徴です。三歳以降は不振が続きますが、大負けしているわけではないので、血統的にどこかで復活するような気はします。

まぁGⅠでは間違いなく厳しいんでしょうが、もっと長めの距離で試してもらいたいですね。

スワーヴリチャード

母の父:Unbridled’s Song(ミスタープロスペクター系)

タイムフライヤーが中山競馬場で初のGⅠ勝利をしたと思ったら、今度はこの馬が阪神競馬場で行われた大阪杯(GⅠ)に勝利しました。

しかもレース内容が凄まじく、スローペースと見るや向こう正面で進出し始めて、結局1000m近くのロングスパートになりそのまま押し切るといった内容で、騎手も馬を信じていないと中々できない乗り方でした。

2歳時から元々能力を感じさせる馬で僕も皐月賞では本命にしていたほどの馬ですが、古馬になってさらに力をつけた印象で、2018年は他の馬に比べて頭一つ抜けているかもしれません。

母の父はミスタープロスペクター系のFappiano(ファピアノ)の血を引くUnbridled’s Song(アンブライドルズソング)で、たくさんの活躍馬を送り出していますね。母系は他にもSeattle SlewやRivermanなど底力のある血を多数もっています。

潜在的な能力はかなり感じさせる馬ですが、この血統独特の詰め切れなさはもっていますね。

その他の重賞勝ち馬

リスグラシュー(マイルチャンピオンシップ、阪神JF・桜花賞・秋華賞それぞれ2着、東京新聞杯)、ウィンヴァリアシオン(GⅠ2着四回、日経賞など)、フェイムゲーム(重賞6勝の他、天皇賞・春2着)他多数。

 

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産駒の特徴と傾向

2歳戦から走るが本格化は遅め

これは一年を通して予想をしていくと分かりますが、古馬の中長距離GⅠレースに出走してくるような産駒の種牡馬になると、2歳戦では中々その名前がなかったり見ないもんですが、このハーツクライとステイゴールドは一年をとおしてその名前をよく見ることに気づきます。

ディープインパクトなんかは2歳からクラシックまでの出走メンバーの占拠ぶりを考えると、ビックリするぐらい古馬の一流レースで名前が少なくなるのですが、こういった仕上がりの早さや成長力は馬主孝行な種牡馬だと言えますね。

ただ2歳戦ではまだまだ完成途上な馬が多いので、激走を期待するのは時期的に早く、底を見せていない馬を押さえておく程度が無難でしょうし、後に一流馬になる馬も取りこぼしが目立ちます。

2018年のダービーはグレイル、ゴーフォザサミット、アドマイヤアルバ、タイムフライヤーと粒ぞろいの印象でしたが、結果はゴーフォザサミットの7着が最高でした。やはりこの時期の完成度ではディープインパクト産駒のほうが上であり冷静な判断が必要なのかもしれません。

ダートは苦手な部類

ハーツクライの母の父にトニービンがいるせいか、ダートを苦手にしています。

勝ち星も未勝利戦から1000万円クラスに集中しており、下のクラスをたまに勝っているという程度です。

他の種牡馬に比べてかなり穴をあけていますが、走っている条件がまちまちで、正直狙わないほうが無難でしょう。

上位人気も疑ったほうがいいレベルです。

弱い相手には強いが基本的には善戦タイプ

ハーツクライ産駒を見ていると面白いのはGⅡだと物凄く強い勝ち方をするのに、GⅠになると勝ちきれないところでしょう。

個人的にこのあたりの原因は末脚はしっかりとしているものの、一瞬しかいい脚が使えず最後の最後でヘタるのが原因ではないかと思います。

GⅡで強い勝ち方をしたからと言って人気して飛ぶのはこの産駒の常とう手段なので馬券の頭にするには少し危険な種牡馬に思えます。

実力はある馬が多いのですが、過大評価は禁物と言えます。

ただGⅠでの好走ぶりはお見事という感じで、凡走した時もあまり二桁着順がないような気がするのはスタミナや終いがしっかりしているからではないのでしょうか。

GⅠレースは東京コースと天皇賞・春で信頼

ハーツクライ産駒はそのイメージほどGⅠを勝っていない種牡馬ですが、GⅠレースになると面白い傾向があります。それは特殊な条件になると突然走り出すことがある点で、競馬場では東京競馬場、距離では長距離レースで一変することがあり、特に最近までGⅠは東京コースしか勝っていなかったことは有名な話ですね。

昨年やっとタイムフライヤーが中山競馬場のホープフルステークスで勝利しましたが、東京コース以外で人気しているようだと少し疑ってかかったほうがいいような気がします。

また目立つのは天皇賞・春での好走の相性良さですが、逆に宝塚記念は凡走ぶりが目立ちます。

時計がかかる馬場は割引

比較的GⅠレースで二着や三着に入ることの多いハーツクライ産駒ですが、ハーツクライ産駒が古馬GⅠに出走し始めたこの6年間で天皇賞春は2着四回、3着三回という抜群の相性を見せています。逆に宝塚記念は二着が一回のみと出走頭数を考えると不振という数字です。

有馬記念も二着が一回と三着が一回で天皇賞春での成績とは雲泥の差です。

どちらも共通点としては比較的上り時計がかかりゴール間に坂があるという点であり、最後のひと踏ん張りができないというのが理由なのかもしれません。

また宝塚記念のころの阪神の馬場状態はあまりよくなく、どちらかと言えば時計の速い軽い馬場向きなのでしょうね。

牝馬はマイルに対応できるが基本2000mから

上級馬を見ていくと活躍馬は中長距離に偏ります。種牡馬ランキングの平均勝ち馬距離を見ても1860mというのは芝レースではかなり長めの部類に入り、2017年のランキングで見るとステイゴールドやルーラーシップに続く距離になります。1600m以下での重賞勝ちはやはり牝馬が多くなっています。

2017年芝レースでの平均勝ち馬距離

1位 ルーラーシップ(総合12位)55勝 約1,935m
2位 ステイゴールド(総合3位) 114勝 約1,933m
3位 ハーツクライ(総合4位) 88勝 約1,861m
4位 ハービンジャー(総合6位) 70勝 約1,840m
5位 ネオユニヴァース(総合13位) 20勝 約1,840m

※芝での勝利数が20勝以上の馬限定

牡馬の1,600m以下の重賞勝ち馬

ジャスタウェイ(安田記念、アーリントンカップ)、ロジクライ(富士ステークス、シンザン記念)、ツルマルレオン(北九州記念)

一流馬は早い段階から能力の片りんを見せる

最近は2歳戦やクラッシックでもコンスタントに有力馬を送り出すようになったハーツクライですが、ファン(というか競馬メディア)は大舞台に強い血であることが浸透してきたためか、実力よりも人気をする傾向になってきた気がします。

そういう僕も父がハーツクライというだけで怖いなと感じてしまうものの、馬券を買ったら下位に沈んで半年後になんであの馬を評価していたのか、不思議に思うことが多くあります。

冷静に振り返ってみるとGⅠで馬券に絡んでくる一流馬は、底を見せていないか得意な条件がしっかりとしたタイプに限られ、前走の似たような条件で凡走していた馬が突然激走することは少ないように感じます。

そういった意味でもハーツクライだから来そうというのはディープ産駒と同様いいカモの考え方かもしれません。

あくまで能力通り走るタイプと見ておいたほうがよく、理由もなく大負けしているような馬の激走を期待するのはお勧めできませんし、調子のいい馬が距離延長などで条件が合う時などに馬券的うま味が出るタイプなのでしょう。

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