ハービンジャー産駒の特徴と傾向

投稿者: | 2018年6月1日


 

ポストサンデーサイレンス系種牡馬として期待されるハービンジャー

競馬において血の繁栄は意外と儚い(はかない)ものです。

日本だけを見ても、ナスルーラ系のテスコボーイ、トゥルビヨン系のパーソロン、ノーザンダンサー系のノーザンテーストなどがそれぞれの時代にトップ種牡馬として君臨しましたが、現在、その直系は驚くほど細いものになっています。

代わって現在の日本の競馬界を占拠しているのは、。ご存知のおようにサンデーサイレンス系の種牡馬たちであり、その代表格がディープインパクトとなります。

ただ、このサンデーサイレンスの血も、広がりすぎると逆に極端な近親交配となってしまい、繁殖が自由に行えなくなるなど行き詰ったしまいます。

当然、そういった将来を見越して日本競馬界のトップブリーダーである社台グループは、非サンデーサイレンス(Turn-to)系の種牡馬の導入を積極的に進めているわけですが、そのうちの一頭として輸入されたのがイギリスで走っていたハービンジャーとなります。

種牡馬の世界は当然水物なので、これまで大成功をおさめてきた社台グループでさえも、導入して失敗した種牡馬も多数いたわけですが、ハービンジャーも当初は思ったほどの産駒成績を収められませんでした。

ところが2017年に状況は一変、GⅠホースを三頭も送り出して、一気のブレイクとなりこの年はビンテージイヤーとなりました。

2018年のクラシック戦線でもブラストワンピースという有力馬を送り出し、たまたまではなかったことが証明されたわけですが、今回は今一番熱いと言ってもいいハービンジャーを分析してみたいと思います。

 

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ハービンジャーの血統

2006年 イギリス産

Dansili
1996 鹿毛

父の父

*デインヒル
1986 鹿毛

Danzig Northern Dancer
Pas de Nom
Razyana
1981 鹿毛
His Majesty
Spring Adieu
父の母

Hasili
1991 鹿毛

Kahyasi
1985 鹿毛
*イルドブルボン
Kadissya
Kerali
1977 鹿毛
High Line
Sookera

Penang Pearl
1996 鹿毛

母の父

Bering
1983 栗毛

Arctic Tern Sea-Bird
Bubbling Beauty
Beaune Lyphard
Barbra
母の母

Guapa
1988 鹿毛

Shareef Dancer Northern Dancer
Sweet Alliance
Sauceboat Connaught
Cranberry Sauce

まずハービンジャーを語るうえで重要なのは祖父のデインヒル(Danehill)です。

デインヒルと言えばシャトル種牡馬(南半球などへの貸し出し)の先駆けとも言える種牡馬であり、日本でも一年間(1996年)ですが供用されていたことがあります。そういった中、ヨーロッパだけでなく特に南半球で産駒が大活躍し、世界中でその血が拡がりました。

オーストラリアではかつて六度のリーディングに輝くなど絶対的な存在だったのがSir Tristram(サートリストラム)です。そして、そこに割って入ったのがデインヒルであり、後に九度もリーディングサイアーに輝いたのは有名な話です。

また、オーストラリアだけでなく、ヨーロッパでもデインヒルの血を引き継ぐ種牡馬や牝馬が活躍馬を送り出し、多くの一流馬の中にその血を見ることができます。

デインヒルの武器は父Danzig(ダンジグ)譲りの圧倒的とも言えるスピード能力の他に、配合によっては距離をこなす柔軟性など、一本調子で早熟な産駒の多かったダンジグに、底力やスタミナ、成長力を追加したようなタイプが多く、このあたりが成功につながっているのでしょう。

ハービンジャーの父でありデインヒルの子であるDansill(ダンシリ)はアメリカ産でフランスを中心に走った馬ですが、現役時代はマイル戦線を中心に走った一流半の馬だったもののフランスで繁殖入りして成功を納めます。

フランスで一度リーディングサイアーで輝くなど、数々の一流馬を送り出していますが、特徴は自身がマイルを中心に活躍していたものの、産駒は中長距離を中心に活躍している点です。

ハービンジャーの母系は特筆すべき近親がいるわけではなくミドルクラスという感じなのですが、母の父系はかつて最強馬ともいわれたSea-Bird(シーバード)の血をひくBering(ベーリング)です。

ベーリングは歴代最強馬の一頭としてかならず名前の挙がるダンシングブレーヴが凱旋門賞を勝った時の不幸な二着馬であり、産駒には英2000ギニー馬のペニカンプなどがいます。この系統は安定して一流馬を送り出すわけではなく一発型の種牡馬となり、このあたりの底力をハービンジャーは引き継いだのかもしれませんね。

現役時代

通算9戦6勝(6-1-1-1)。

三歳の春にイギリスでデビューし、三戦目にはゴードンステークス(GⅢ、芝12F)で勝利を収めたものの、その後の二戦は大敗。

半年の休養後、四歳になると本格化を迎え重賞を三連勝。

GⅠ初挑戦となる大一番キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(GⅠ、芝12F)は二番人気で迎えると、なんとレース史上最大着差となる11馬身差で圧勝し、タイムも2分26秒78のコースレコードという凄まじい内容でした。

史上2位のレーティング(135ポンド)を与えられています。(ちなみにこのレースにはこの年の凱旋門賞を勝つワークフォースも出走していました)

その後骨折のため引退しています。

種牡馬成績

引退後すぐに社台ファームに購入されたため、2014年に第一世代が日本でデビューしていますが、期待された一世代目の産駒で春のクラッシックに出走できたのがペルーフのみでした。

その後、三世代目となる2017年にペルシアンナイトが皐月賞で2着に入ったあとは牝馬クラシックでもモズカッチャン、ディアドラが活躍し、一気にブレイクしてこの年GⅠを三勝しまたね。

2018年も6月1日現在6位につけており、最終的に上位に来ることが予想されます。(最終的には自己最高の5位

2014年 55位
2015年 14位 重賞2勝(京成杯、京都2歳S)
2016年 9位 重賞1勝(京成杯)
2017年 6位 重賞6勝(秋華賞エリザベス女王杯マイルチャンピオンシップ他)
2018年 5位 重賞10勝(有馬記念、府中牝馬S他)

種付け料は400万円(2011~2013年)→350万円(2014年)→300万円(2015年)→300万円(2016年)→250万円(2017年)→350万円(2018年)と推移していますが、2017年の産駒の大活躍により完全に評価が覆っている感じですね。

おそらく繁殖牝馬の質もこれから上がってくるでしょうし、二年後、三年後に再び大物は出てくる可能性はあります。

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主な産駒

※この記事は2018年6月に最初の記事を書いたため一部内容が古い部分がありますが、時々最新の情報に追記・修正していきます。

ペルシアンナイト

母の父:サンデーサイレンス 母の母の父:Nureyev

2014年 追分ファーム産。

春のクラシックは皐月賞で2着、日本ダービーは7着と好走しましたが、秋は距離が長いと見てマイル路線に方針転換し見事マイルチャンピオンシップ(GⅠ、芝1600m)を勝利しました。

年が変わって2018年もメンバーの揃った大阪杯でスワーヴリチャードの二着にくるなど、改めて地力の高さを示しました。

後方からの競馬が多いものの、末脚が鋭いというよりもいつの間にか来ているというようなレースが多いですね。ただ、気になるのは東京コースを三回走って一回も勝っていません(2018年6月1日現在)。その後も二回走って馬券には絡んでいません

決め手はあるものの、単純な切れ味勝負に強いわけではなく、距離的な限界を感じる馬ですね。

伯父に”ダートの魔王”ゴールドアリュール(父サンデーサイレンス)がいる他、近親にダートの活躍馬が多いですね。

母系はサンデーサイレンスをはじめとしてヌレイエフやニジンスキー、ヴェイグリーノーブルなど底力のありそうな馬が配されています。

モズカッチャン

2014年 目黒牧場産

母の父:キングカメハメハ 母の母の父:Storm Boot(Storm Cat系)

春はオークスを2着したあと、秋になり二戦ほど詰め切れないレースが続きましたが、エリザベス女王杯では古馬を破って見事ハービンジャー産駒GⅠ二勝目となりました。

この馬はペルシアンナイトやディアドラに比べると前に行けるのでレースがしやすい感じがしますが、新馬戦をはじめとして休み明けがいずれも凡走していますね。

負けるときは全くレースの流れに乗れていない感じがし、直線でお!と思わせておいてイマイチ詰め切れない印象があります。

近親にはクイーンエリザベス2世S(英GⅠ、芝8F)などを勝った種牡馬Poet’s Voice(父Dubawi)などがいるほか、ダートで活躍したゴールドティアラ(父Seeking the Gold)がいます。

母系はキングカメハメハ×ストームキャット系のストームブート×Danzig系のChief’s Crownということで中距離をこなせるスピードタイプが多いですね。

大負けはしないもののどちらかと言えば善戦タイプなのは母の父キングカメハメハぽいですね。

なお、全弟のモズリュウオウは期待されたものの中央ではまったく力を示すことができず未勝利のまま地方に流れていきました。

ディアドラ

2014年 ノーザンファーム産

母の父:スペシャルウィーク 母の母の父:Machiavellian

桜花賞を迎える時点ですでに8戦しており、後にGⅠを勝つような雰囲気はなかったのですが、桜花賞は6着、オークスは4着と好走しましたね。

少し休養を挟んだ後三連勝で秋華賞を勝利し、ハービンジャー産駒念願のGⅠ初勝利をあげますが、エリザベス女王杯はいいところなく敗れています。

上記二頭に比べると少し不器用そうで後ろからの競馬になりますが、切れ味鋭いというよりも長くいい脚を使う感じですね。

母系はスペシャルウィーク×マキャベリアン×ヌレイエフということでペルシアンナイトやモズカッチャンほどではありませんがやはりスピード血統です。

従兄弟にはダービー馬ロジユニヴァースいるほか近親に活躍馬もいるのですが、この馬の近親もダートで活躍していますね。

2018年の府中牝馬ステークスでは上り32秒3というとんでもない上がりを記録しましす。

2019年イギリスのナッソーS(GⅠ、牝馬限定、芝1980m)では英愛1000ギニー馬ハモーサ、仏オークス馬チャンネルの強豪相手に見事勝利し、その地力の高さを見せました。

ブラストワンピース

2015年 ノーザンファーム産

母の父:キングカメハメハ 母の母の父:フジキセキ

2018年の有馬記念を三歳で勝利しました。

ダービーは5着(二番人気)、菊花賞も4着(一番人気)といずれも人気を背負って詰め切れないというハービンジャー産駒ぽい結果でしたね。

上記の三頭同様、強いのは間違いないんだろうけど、なんとなく最後に詰めてきて勝ちれなかったレースの多い馬なので、いまいち超一流馬感がないのは同じですね。

ただ、有馬記念のようにここぞという時に伸びてくるので非常に特徴がつかみにくく馬券は買いにくい馬ですね。

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産駒の特徴と傾向

ハービンジャー産駒はディープインパクト産駒やハーツクライ産駒に比べると重賞であまり人気しない馬が多いのですが、理由として成績が不安定であったり、主流レースというよりも別路線から流れてくる馬が多いのがどうも理由のような気がしますね。

また買うと来ない、切ると飛んでくるというように馬券的にも難しい種牡馬だという印象があります。

ダートは超がつく苦手

ハービンジャー産駒はルーラーシップ産駒以上に明らかにダートを苦手としており、2018年6月現在、芝で約280勝しているのにダートでたった20勝しかしていません。(それから半年経っても芝で30勝しながらダートでは2勝しかしていません)

しかもルーラーシップのダートでの勝率が8%あるのに対して、約600戦しての20勝なので3%というとんでもない苦手ぶりで、これは同じようにダートが苦手なアドマイヤムーンをも下回る数字です(アドマイヤムーンは約1300戦して約60勝)。

当然ダートを走っている馬は未勝利戦や下級条件ばかりで、スピードがない馬がこちらにまわっているものの、パワーや前向きさがないので苦手にしているのでしょうか。

一通りダート競争の戦績を調べてみましたが、四番人気以下だとダートはまず消しでOKです!

またダートレースの平均勝ち馬距離1700mというのはダート系の種牡馬に比べると非常に長く、ダートは短距離になるとさらに信用できません。

一流馬は母系にスピードとパワーが必要?

これはまだサンプルが少ないのであくまで推測なのですが、上記に挙げたGⅠホースのうち三頭は近親に結構なレベルで活躍したダートの活躍馬がいます。

また共通点として挙げられることとしてスタミナよりもスピードよりの配合が多く、ハービンジャーの弱点を補完するような配合がいいのかもしれません。

ブラストワンピースを除くGⅠホース三頭の母系にノーザンダンサー系の主要種牡馬であるヌレイエフやダンジグが配合されているのも共通点に挙げられますね。(そういった点ではブラストワンピースは少し他三頭と血統内容が異なっていると言えます。)

上記三頭以外も母の父はサンデーサイレンスなどのスピード系種牡馬なのが特徴です。

新しくGⅠホースとなったブラストワンピースも母の父はキングカメハメハですが、母の母の父はフジキセキです。

ペルーフ・・・サンデーサイレンス
ブラストワンピース・・・キングカメハメハ(母の父がフジキセキ
トーセンバジル・・・フジキセ



 

切れ味よりも機動力で勝負

上級馬での33秒台前半で上がってくる馬はさすがに見当たりませんが、上りタイムなどでは比較的上位に来ることが多いですね。

顕著な傾向を示しているわけではありませんが、東京コースで好走しているのがモズカッチャンぐらいなので、4コーナーなどコーナーワークでいつのまにか進出してくる馬が多いこともあり、まっすぐのヨーイドンは苦手という印象があります。

と、書いていたらディアドラさんが府中牝馬ステークスで32秒3というとんでもない上がり時計をたたき出しましたがこれは例外中の例外でしょう。

決め手がないとはいいませんが、馬の格や身体能力で勝負するタイプなので、直接対決や負けたレースの敗因がはっきりしない場合は力負けとみて評価を下げる必要があります。重賞クラスになるとスローペースや末脚勝負になりやすい東京競馬場では過度の期待は禁物です。

また道中での機動力が高く勝負所でついていけるので大崩れはしにくい馬が多いのは特徴です。

長距離はこなせるが長所が活きない

これは機動力で勝負という点と関係していますが、父ハービンジャーがイギリスで活躍していたために中長距離向きとは思えるものの、ハーツクライやかつてのリアルシャダイのように得意というほどではありません。

最後まで走り切るという点ではこなせるとは言えますが、中距離のレースのように勝負所で動いて差し切るほどの豊富なスタミナがあるとは言えず、あくまで中距離系の種牡馬と見ておくべきでしょう。

距離延長が決してプラスになるタイプではないと思います。

産駒は上級馬と下級馬に分かれる

これは種牡馬ランキングなどを見ていると一目瞭然ですが、勝ち馬率が毎年2割5分程度(通算では3割ちょい)ということでトップ10に入っている種牡馬としてはかなり低目の数字となります。

また平均的な産駒のレベルを示すアーニングインデックスも通算では1を切っているので、かなり走る馬と走らない馬に分かれていることが言えます。

似たような傾向を示しているんがステイゴールドやオルフェーヴルの系統なのですがダートが苦手なところはそっくりですね。

まだ超がつく大物はでていませんが一発型の種牡馬と言えます。

僕がPOGで指名していたモズカッチャンの全弟モズリュウオウなんかはさっぱり走らずいまだ未勝利で、さっき調べたら地方に流れていったみたいです(笑)。

非根幹距離や小回りコースやローカルで信頼

これはハービンジャー産駒というよりもヨーロッパ系種牡馬全体に言えることですが、1,400mや1,800m、2,200mなど非根幹距離での激走が目立ちます

また根幹距離の時は中山や新潟競馬場での勝利が目立ち、やはり機動力や操作性を活かしたレースが得意なのかもしれません。

テンからどんどん行ったり、末脚勝負の極端な馬が少ない影響もあるでしょう。

札幌・函館、中山は買い

競馬場別で戦績を見ると、洋芝のせいなのか札幌や函館での良績が目立ちます。

2019年3月5日現在、札幌・函館での勝率がそれぞれ10.7%と12%(連対率だと16.5%と22.2%)なんですが、中山競馬場の10.2%(連対率16.3%)をのぞくと、他は5~8%と一けた台の勝率なので他のトップ種牡馬に比べると少しだけ偏った数字を示しています。

他に札幌や函館での成績が他の競馬場を上回っている種牡馬としてディープインパクト産駒(函館は勝率9.3%一番苦手にしているが札幌は16.4%で全競馬場で一番高い)やハーツクライ産駒(札幌・函館だけ勝率が10%を超えている)が挙げられますが、これらは有力馬が新馬デビューしているのが理由と考えられ、ハービンジャーとは少し理由が違うのではないかと、僕は思います。

洋芝の得意そうなステイゴールドやアドマイヤムーン産駒も調べてみたんですがハービンジャーほどの偏りはなく、今考えると札幌芝1800m(札幌+非根幹距離)の札幌2歳ステークス(GⅢ)のニシノデイジーは十分買えたレースだったと言えます。

ちなみに福島や新潟競馬場は不振で5%前後の勝率になっており、どちらも前に行った馬が比較的止まらないのが共通点なので、このあたりが影響しているのかもしれません。

上級馬になればなるほど競馬場の得手、不得手はなくなってくると思いますが、決め手に欠けがちな下級条件の馬や若駒には参考できるデータだと思います。

調子のいい馬を重視

モズカッチャンなどのイメージなどから休み明けや新馬戦を苦手とするイメージがありますが、上級馬の戦績を調べてみると意外と新馬戦を勝利しています。

そこに共通しているのは一番人気、もしくは上位人気だったという点です。最近新馬戦を勝利した馬を見てもほぼ上位人気であり、訳が分からない馬が勝っているというよりも、動きのいい馬が勝っていると言えます。

モズカッチャンの新馬戦などは十番人気(結果は6着)だったぐらいですから、それほど動きが悪かったのでしょう。

ただ、好走する場合は比較的上位人気のことが多いので、調子のいい人気薄の馬を狙うというよりも、近走調子のいい馬や底が割れていない馬以外はあまり信頼できないという見方でいいでしょう。

このあたりダンジグ系らしい傾向と言えますね。

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