トップ5級の名種牡馬もなぜか地味な存在
僕はお察しの通り種牡馬ランキングを非常に眺めるのが好きなのですが、ここ10年ぐらいの上位のランキングと言えば、1位ディープインパクト、2位キングカメハメハこれは鉄板ですね。
そこにステイゴールドやハーツクライなどが絡んでくるというのが例年の流れなのですが、もう一頭の常連がダイワメジャーです。
産駒が2011年にデビューして二年目以降は7位→4位→5位→4位→3位→4位なので間違いなくトップ種牡馬の一頭なんでしょうが、先に挙げた四頭に比べるとどうしても僕の中では印象が薄い気がします。
似たような順位にいつもハーツクライがいるのですが、印象としては断然地味ですし、それを示すかのようにダイワメジャー産駒が1年間で重賞を勝ったのは最高で5勝(三回)です。
ステイゴールドが最高13勝、ハーツクライが11勝(ちなみにディープインパクトは38勝でキングカメハメハは17勝)ということを考えると圧倒的な地味さ加減なんですが、今回はこのいつの間にかランキングの上位にいる謎の種牡馬ダイワメジャーに光を当ててみたいと思います。
※この記事を最初に書いたのは2018年の8月になりますので、一部情報が古い場合もありますができるだけ最新の情報を追加していきます。
Contents
ダイワメジャーの血統
父
*サンデーサイレンス |
父の父
Halo 1969 |
Hail to Reason 1958 | Turn-to | |
Nothirdchance | ||||
Cosmah 1953 | Cosmic Bomb | |||
Almahmoud | ||||
父の母
Wishing Well 1975 |
Understanding 1963 | Promised Land | ||
Pretty Ways | ||||
Mountain Flower 1964 | Montparnasse | |||
Edelweiss | ||||
母
スカーレットブーケ 1988 |
母の父
*ノーザンテースト |
Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Lady Victoria | Victoria Park | |||
Lady Angela | ||||
母の母
*スカーレットインク |
Crimson Satan | Spy Song | ||
Papila | ||||
Consentid | Beau Max | |||
La Menium |
父は問答無用の大種牡馬サンデーサイレンスで説明不要でしょう。
ダイワメジャーは2001年生まれですが、一つ下の世代にディープインパクトがいるなど、この時期は種付け頭数も非常に多く気力体力ともに最も充実していた時期に種付けされた馬と言えます。(ちなみに、この頃のサンデーサイレンスは一年間の獲得賞金だけで毎年80億円近く稼いでいます。スゲー!)
母はスカーレットブーケですが、最近は妹のダイワスカーレット(父アグネスタキオン)の活躍もあって、いまや「スカーレット一族」として認識されている名門です。
ただ、当時の一般的な血統評価としてはスカーレットリボン、ダイワメジャーの母スカーレットブーケが重賞を買っていたもののGⅠを勝っていないので、あくまでノーザンテーストの血を引く有力牝系の一つという感じであくまで”なかなかの良血”という感じでしたね。
この頃の社台のほこる名牝系と言えば、ダイナアクトレスの系統やダンスパートナーなどのダンシングキイの系統でしたね。
しかしながら、2000年以降はスカーレットインクを祖とする「スカーレット一族」の活躍は凄まじく、スカーレットブーケからはダイワメジャー、ダイワスカーレット兄妹だけでなくその姉ダイワルージュも重賞を勝ち、一族にはサカラート、ヴァーミリオン兄弟、トーセンジョウオーなどダートで活躍した馬や桜花賞2着のブルーリッジリバーなど重賞で活躍した馬を多数送り出しています。
またこの牝系の特徴としてはどの産駒も中央競馬での勝ち上がり率が非常に高く、駄馬があまりいないのですが、筋肉隆々の馬が多いと言われており、優れたスピードが下地にあるのでしょう。
母の父ノーザンテーストも80年代に君臨した大種牡馬であり優れたスピードとパワーで近年の牝馬の質の劇的向上の立役者であり、サンデーサイレンスと同じように様々な条件で活躍する馬を送り出しました。
どの馬も総じて走ったため特徴というものが見えにくいところですが、どちらかと言えば決め手に優れたタイプではなく、競馬に前向きな気性とスタミナを備えたスピードというのが武器でした。
母の母の父Crimson Satan(クリムゾンサタン)は珍しいヒムヤー系の種牡馬ですが、今でもあまり見ない血ですね。世界的にも滅びつつある系統です。
全体的な血統の印象としてはマイルからクラシックディスタンスまでこなせるスピード系中距離馬という感じですね。
ほどよく色々な血も入っており健康的でダートもこなせるようなパワーありそうですが、配合から爆発的な決め手があるような感じません。
現役時代
2001年生まれで同期には、キングカメハメハを大将としてハーツクライ、カンパニー、スズカマンボ、ハットトリックなどの他コスモバルクやブラックタイド、牝馬ではスイープトウショウやダンスインザムードなどがおり、かなりレベルの高い世代だったと言えます。どちらかと言えば古馬になって活躍する馬が多かった世代ですね。
3歳時には1勝馬の身でありながら皐月賞を制していますが元々かなり性格がきつい馬だったと言われており、それが成績の不安定さに影響していたと言われています。
また3歳の後半からは競争に影響を及ぼすといわれている喘鳴症(のどなり)がかなり酷い状態だったようで秋に手術が行われるなど、若いうちは能力はあるもののレースに挑む以前の問題がかなり多かったようです。
4歳時は手術で体質改善はしたものの5戦1勝。
5歳になってやっとまとにレースに挑めるようになったのか天皇賞(秋)、マイルチャンピオンシップを連勝するなど8戦4勝。
6歳時は7戦2勝ながらその2勝が安田記念とマイルチャンピオンシップ。
通算成績は28戦9勝(9-4-5-10)で結局GⅠを5勝していますが、マイル以下という条件で見ると5-3-0-2、GⅠに限定すると全16戦して5-1-3-7と病気などの面を考慮しなくても得意条件下ではかなり勝負強い馬だったということが分かります。
当時この馬を見ていた印象としてはスピードを活かした先行力が持ち味で、そのせいか決め手には欠けるものの、放っておくとそのまま残ってしまうという感じでしたね。競争成績ほど強いという印象はなかったのですが、何だかんだ最後に勝っていたのはこの馬だったという感じで、そこまでスター性はなかった記憶があります。
まぁ、当時はディープインパクト狂想曲が終わったと思ったら、妹のダイワスカーレットや牝馬でダービーを勝ったウォッカが登場するなど、そちらで話題が持ち切りだったのでしょうがないでしょう(笑)。
主な産駒
カレンブラックヒル
母の父:Grindstone(Fappiano-Mr Prospector系) 母の母の父:Storm Cat
主な戦績:NHKマイルカップ(GⅠ)、毎日王冠、ニュージーランドトロフィー(以上GⅡ)他
2009年産の初年度産駒ですが、いきなり無傷でNHKマイルカップ(GⅠ)を勝利しました。
三歳の秋に天皇賞(秋)で五着に入るなど素質は示しましたが、一年挟んで2014年と2015年に一勝づつしたのみでした。
優れたスピードが武器で勝ち馬からは大きく離されないものの、一線級相手だと踏ん張りが効かない感じでしたね。
通算22戦して〔7-0-0-15〕というかなり極端な戦績です。
コパノリチャード
母の父:トニービン 母の母の父:Caerleon
主な戦績:高松宮記念(GⅠ)、スワンステークス(GⅡ)、阪急杯、アーリントンカップ(GⅢ)
2010年産の二年目の産駒となります。
この馬もカレンブラックヒルと同じように22戦して〔6-2-0-16〕と馬券に絡まないとは全く絡まないという極端な成績です。
またバテて大負けしたとき以外は勝ち馬から1秒以内には来ており、全く勝負になってないわけではないけど勝ち負けしているわけではないという部分でも似ていいます。
勝った高松宮記念とスワンステークスが不良馬場とやや重だったことも少し気になるデータです。
(カレンブラックヒルの5歳と6歳の勝ったレースもやや重と重馬場で良馬場ではない)
メジャーエンブレム
母の父:オペラハウス 母の母の父:Rainbow Quest
主な戦績:NHKマイルカップ、阪神ジュベナイルフィリーズ(以上GⅠ)、デイリー杯クイーンカップ(GⅢ)など
2013年産。ダイワメジャー産駒唯一の中央GⅠ二勝馬です。
例のごとく他の馬と同じように逃げに近い先行馬となりますが、三歳春で底を見せないまま引退したのでどこまでの馬だったのかは不明です。
個人的にはやはり少しづつ頭打ちになってきたのではないかと予想しますが、母系がヨーロッパのスタミナ型のちょっと面白い血統で子供がどんなタイプに出てくるのか期待しています。
レーヌミノル
母の父:タイキシャトル 母の母の父:ロイヤルスキー
主な戦績:桜花賞(GⅠ)、小倉2歳ステークス(GⅢ)など
2014年産の現役馬ですが、三歳春までの活躍からそれ以降の凡走ということでカレンブラックヒルやコパノリチャードと同じ道を進んでいます。
またこの馬もバテた時以外は離されずの凡走ということで同じようなレースをしているのも似ていますね。
勝った桜花賞もやはりやや重でした。
産駒の特徴と傾向
武器は優れた先行力と前向きな性格
ダイワメジャー産駒の武器は何と言っても優れた先行力です。
それこそ抑えきれないぐらいのスピードでゲートが開くと同時にダッシュしていく馬が多いのですが、あまり小細工の効かない二歳戦や新馬戦などでの活躍は、やはり基本的なスピード性能の高さが要因と言えるでしょう。
サンデーサイレンスの系統の中でもアメリカ型の血統に馬に近い傾向を示している種牡馬です。
またこういった独特の特徴を示すせいか、母の父はタメの作れるノーザンダンサー系の種牡馬よりもスピードをベースとしている種牡馬のほうが相性がいい傾向にあります。
二歳戦から走るが早熟というわけではない
二歳時から活躍するには、もちろん仕上がりの早さが必要ですがそれだけではランキングの上位にはこれません。
早熟なタイプだと勝ち馬率が高くてIE(アーニングインデックス:一頭あたりの獲得賞金額の偏差値のようなもの)が低くなりがちですが、勝ち馬率が4割後半、IEも1.5に近いので新馬戦や未勝利を勝った後も二勝目、三勝目をあげている馬が多いことが分かります。
上級馬も三歳春までの活躍が嘘のように停滞期に入る馬が多いのですが、その後なんだかんだで勝っていますし、レース内容も活躍馬の欄で触れましたが決して大負けしているわけではありません。
距離はこなせるが先行力が諸刃の剣に
ダイワメジャー産駒と言えば種牡馬ランキング上位馬の中では勝ち馬の平均距離が極端に短い(他の上位馬が1800m前後なのに対してダイワメジャーは1500mを切っている)ことは別の種牡馬で述べたことがありますが、距離別の勝率などを見てみると距離が伸びてそれほど勝率は落ちていないようです。
あくまで個人的に想像にはなりますが、このあたりはどうしても長距離が少ない二歳戦の出走数が多いことや、スピードを伸ばす調教が行われているのが多いため、道中ためが作れない馬が多いのが短距離が得意な馬が多くなり、中長距離レースへの出走を自重するするのではないかと思います。
2000m以上をしっかりと勝っている馬もいますが、やはり距離をこなそうとしたらイケイケドンドンの脚質では厳しいです。
やはりクラスが上がれば上がるほど長距離への出走は少なくなっています。
ベストは1400mから1800m
二歳戦で活躍しているでもちろん1000mから十分対応できますが、重賞レースになると意外と1200m重賞を勝っていません。
ナックビーナスあたりがスプリント戦では好走してはいるものの、コパノリチャード(高松宮記念)、レーヌミノル(小倉2歳ステークス)、エピセアローム(小倉2歳ステークス)ぐらいというのは先行力を考えると意外な感じです。
純粋なスピード勝負になると勝ちきれないと見たほうがいいでしょう。
決め手に欠けるため大物感がない
これも優れた先行力と関係あるかもしれませんが、スタートからドンドン行く馬が多いせいもあり、直線一気で差してくる馬が非常に少ないですね。
三歳春までは安定した成績を残すしたあと、古馬になると大負けはしないもののパッとしない馬が多いのも、抜け出す脚やためるレースができないのが原因だと思われます。
種牡馬ランキング上位の常連なのにGⅠを数えるほどしか勝っていませんが、最後の最後で踏ん張りがきかないのが特徴です。
実は時計勝負が苦手なので湿った馬場で活躍
これは前々から感じていたことなんですが、ダイワメジャー産駒に超大物がいないことや古馬になってスケールダウンするのは実は限界的なスピードがないのが根本的な原因なのでだと考えらえます。
三歳の秋以降やレースのグレードが上がると勝ちきれなくなったり、かといって馬場が湿った時にポツンと重賞を勝ってしまうのもこれで説明がつきます。
個人的に武器は単純なスピードというよりも時計のかかる芝をさばくパワー型のスピードのような気がします。
ただパワーはあると言ってもダートの重賞をそれほど勝っているわけではないのでダートはこなせる程度という見方でいいでしょう。
人気どおりに走るが穴を狙うなら道悪かダート
この記事を作成するにあたり、勝った馬の条件などを何百もながめてきたのですが、基本的に勝った馬はほとんど上位人気で勝っていました。
これは統計を取ったわけではありませんが、数百のデータをながめた印象として下位人気で勝ったパターンとして目についたのはダートであったり、得意条件でない中長距離レースが多かった印象があります。
つまりは得意な条件下であると良くも悪くも実力通りに走ると大怪我せずに済みそうな気がします。