ノーマークから一転、勝ち馬率の高さが目立ち始めたダイワメジャーの後継種牡馬
今回はカレンブラックヒル(父ダイワメジャー)について見ていきたいと思います。
カレンブラックヒルは2019年に初年度産駒がデビューしたばかりの種牡馬で、まだ取り上げるにはデータが少ないのですが、同期の大物であるキズナ(父ディープインパクト)やエピファネイア(父シンボリクリスエス)の裏で実はひっそりと高い勝ち馬率を示しています。(2020年5月現在キズナと同じぐらい勝ち馬率が高い!)
社台スタリオンステーションで繋養されている二頭の成功は当然としても、勝ち馬率は生産者にとっては重要な要素なので、零細牧場にとっては非常に注目を集めているのではないのでしょうか。
勝ち馬率の高さは以前に書いたの新種牡馬の予想記事を見直していてたまたま気付いたのですが、僕がいま一番気になる種牡馬ということで、サンプルは非常に少ないものの、どういった条件で買いなのか今後の展望も含めながらカレンブラックヒルを丸裸にしてみたいと思います。
(画像引用:「株式会社優駿(優駿スタリオンステーション)」公式サイトより)
Contents
カレンブラックヒルの血統
2009年 ノーザンファーム産
父
ダイワメジャー |
父の父
*サンデーサイレンス |
Halo | Hail to Reason | |
Cosmah | ||||
Wishing Well | Understanding | |||
Mountain Flower | ||||
父の母
スカーレットブーケ |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | ||
Lady Victoria | ||||
*スカーレットインク | Crimson Satan | |||
Consentida | ||||
母
*チャールストンハーバー |
母の父
Grindstone |
Unbridled | Fappiano | |
Gana Facil | ||||
Buzz My Bell | Drone | |||
Chateaupavia | ||||
母の母
Penny’s Valentine |
Storm Cat | Storm Bird | ||
Terlingua | ||||
Mrs. Penny | Great Nephew | |||
Tananarive |
カレンブラックヒルはダイワメジャーの初年度産駒にあたります。
父のダイワメジャーはキングカメハメハと同世代の皐月賞馬で、他にはハーツクライなどがおり、一線級にはかなりレベルの高い馬がいた世代の馬です。
多数の活躍馬を出すスカーレット一族の出身で、妹にはウォッカと名勝負を繰り広げた名牝ダイワスカーレット(父アグネスタキオン)がいますが、当時としては重賞級の馬は出してくるものの超一流馬まで行く馬がおらず、今一つ殻を破れない牝系の出身という印象だった記憶があります。実際に皐月賞は十番人気での勝利でした。
その後しばらく成績が低迷したことにより早熟かと思われましたが、原因は喘鳴症によるもので、手術をすると成績が改善します。古馬になってからも結局GⅠを四勝し、この世代レベルの高さを見せつけた馬でした。
種牡馬入りすると自信の成績と同様安定した成績を残し、マイル前後の距離で前向きな気性と高いダッシュ能力を見せる馬を多く送り出すようになります。
また仕上がりは早いタイプの種牡馬ですが、早熟というよりも二歳戦や三歳戦で見せた能力を古馬になっても引き続き見せ、息の長い活躍をしている馬が多いのが特徴です。
そしてカレンブラックヒルの母系に目をやると、祖母の従姉妹にはフランス1000ギニー馬ハトゥーフ(Hatoof)がいるものの、日本では地方を中心に活躍する近親がいる程度であまり活躍を期待できる牝系の出身ではありません。半弟のレッドアルヴィス(父ゴールドアリュール)がユニコーンSを勝ったのが目立つ程度になります。
母の父グラインドストーン(Grindstone)はアンブライドルド(Unbraidoed)の代表産駒の一頭ですが、ストームキャット(Storm Cat)系との配合からはベルモントSなどGⅠ三勝のバードストーンが出ています。全体的には仕上がりが早く、三歳戦のクラシックで勝負強い馬を出している系統ですね。
父であるアンブライドルドの系統はアメリカではエンパイアメーカーなどを介して父系が発展していますが、日本ではどちらかと言えば母系に入り高いスピード能力や仕上がりの早さを武器に、存在感を発揮している系統になります。またダイワメジャー産駒と同様単なる早熟なタイプではなく持続的に活躍できる血統です。
カレンブラックヒルの血統を総合的に判断すると、仕上がりは早いほうで古馬になって爆発的成長を見せるというよりは二歳戦で結果を残しながら三歳の春にピークを迎えるタイプとなります。
また父ダイワメジャーの影響力はかなり強いので母系はある程度距離をこなせる血があるものの、距離的限界は見せやすいタイプではないかと推測できます。
また母系は完全なアメリカ型の配合なので、ダイアメジャーのパワー型のスピードをより強調している配合となり、ダイワメジャー産駒をよりパワーよりにした感じになると思われれます。
おそらく自己主張の強い系統なので、良くも悪くもダイワメジャーぽい産駒が出てくるのではないのでしょうか。
現役時代
通算:22戦7勝(7-0-0-15)
主な成績:NHKマイルカップ(GⅠ)、毎日王冠(GⅡ)、ニュージーランドトロフィー(GⅡ)、ダービー卿チャレンジ(GⅢ)、小倉大賞典(GⅢ)
デビューは若干遅く、三歳の一月に栗東の平田修きゅう舎からデビューしています。
この2009年生まれの世代には古馬になって大活躍した馬が多く、ゴールドシップ、ジャスアウェイ、フェノーメノなどマイルから長距離までそうそうたる面々が並びます。他にもスピルバーグやワールドエースなどがおり、レベルが高かった世代ですね。牝馬にはあのジェンティルドンナやヴィルシーナがいます。(ちなみにこの世代のダービー馬はディープブリランテ)
三戦三勝で挑んだNHKマイルCは一番人気にこたえる形で逃げ切り勝利、秋の毎日王冠も三歳でありながら勝利して五連勝を飾りました。
ところが絶頂期はここまでで、次走天皇賞秋は五着(三番人気)に踏ん張ったものの、GⅠでは掲示板にすら載ることができなくなり結局ダービー卿チャレンジと小倉大賞典を制したのみでした。
二着、三着が一回もないというのは極端な成績ですね。
レーススタッツを詳しくを分析すると逃げ・先行脚質とは言え、上り3Fで33秒台を記録したことが一度しかなく、勝った時の勝ちタイムが比較的かかっていることからも、若干時計のかかる馬場をスピードで押し切るのが特徴だったと言えます。
ダイワメジャーの初年度産駒なので当時ははっきりしませんでしたが、今となってはこれはダイワメジャー産駒の特徴そのものですね。
時計が比較的かかる二歳戦、三歳戦では活躍するものの古馬になるとぱっとしないのは、このように時計勝負にあまり強くないのが理由となります。
種牡馬成績
2019年に初年度産駒がデビューしました。前述のとおり同期にはキズナやエピファネイア、ゴールドシップなど大物が並びます。
2019年・・・110位:勝ち馬率.182(出走33頭中6頭が勝ち上がり)、勝利数6、総獲得賞金約8,849万円
2020年・・・58位:勝ち馬率.250(出走40頭中10頭が勝ち上がり)、勝利数10、総獲得賞金約11,793万円(※)
通算・・・勝ち馬率.372(出走43頭中16頭が勝ち上がり)、勝利数16、総獲得賞金約20,642万円(※)
※2020年5月17日現在。(以下の成績についても同様)
注目すべきは通算での勝ち馬率が一世代だけながら3割7分2厘という高い数字です。
同期のキズナが3割8分2厘(152頭で58頭が勝ち上がり)というのはさすがですが、エピファネイアの3割8厘(133頭で41頭が勝ち上がり)、リアルインパクトの2割2分1厘(68頭で10頭勝ち上がり)と比べるとかなり高いということが分かります。
そして面白いことにカレンブラックヒルの16勝は新馬戦1勝、未勝利戦15勝で今のところ二勝馬がいないというおもしろデータになっています。
種付け料の推移
カレンブラックヒルは2016年から優駿スタリオンステーションで供用されていますが、2020年まで
受胎条件70万円、出生条件100万円で変更はないようです。
ちなみに同期の2020年の種付け料はキズナ(社台SS)は600万円、エピファネイア(社台SS)は500万円、ゴールドシップ(ビッグレッドファーム)300万円、リアルインパクト(社台SS)200万円なので、お買い得感がタップリです。(これらの種牡馬はいずれも受胎条件での金額のようです)
産駒の特徴と傾向
※以下に取り上げるデータは2020年5月17日現在のものをベースにしています。今後追記する場合は文字の色を変えて行います。
勝ち馬率が高い
やはりまず目につくのが勝ち馬率が高いことですね。
一世代だけで四割近いというのはトップ級の種牡馬の成績であり、なお且つ繁殖牝馬の質を考えると異例とも思える高さを今のところ記録していることになります。
現在産駒が43頭デビューしていますが、ノーザンファーム産の馬が四頭しかいないのにこの数字です。しかも四頭のうち勝ち上がっているのはカヴァス一頭のみで、他の三頭もなんと近々勝ち上がりそうな気配です。他に大手・有名牧場がないか探してみてもフジワラ牧場産の馬が一頭いるぐらいで、あまり名の知れた牧場の生産馬はほとんどいません。
実はこの勝ち馬率の高さは、僕としてはある程度予想の範囲内でした。
ダンジグ(Danzig)系やストームキャット系を例にとると分かりますが、単純にスピード能力の高い種牡馬は勝ち馬率が高くなりやくなる傾向があり、代わりに大物が出にくいというのが昔からの血統の歴史です。
そう考えるとこのカレンブラックヒルの種牡馬の武器はやはりスピードということになります。
ダートは人気どおり走る
今のところ血統馬が少なかったり、下級条件でのレースが多いのでまだ断言するのは早いのですが、信頼できるのはダートです。
芝のレースでは人気して飛んだり、人気薄で突っ込んだりしており読めない部分があるものの、ダートに関してはある程度人気どおりの結果になっているケースが多く見受けられます。
ただ逆の言い方をするとダートでは人気薄で激走しているケースが少ないのが特徴なので、人気薄を狙うのは賢明ではありません。
ダートは苦手にしている馬が少ない感じがするので、どうしても人気薄を狙うのであれば初ダートの馬などでしょうね。
このあたりは父の母の父であるストームキャット系の影響も強いのではないのでしょうか。
穴を狙うのであれば芝のレース
ダートではあまり激走していないカレンブラックヒル産駒ですが、芝になるとぽつぽつりとですがかなり人気のない時でも激走しています。
芝のレースでは八番人気以下で馬券に絡んだ(三着以内)のが6回(出走114)、ダートではたったの2回(出走107)しかありません。
オープンクラスでもセイウンビーナスがクイーンC(十二番人気)で三着、メルテッドハニーがマーガレットS(L)で二着(十一番人気)に入るなどしており、条件は問わないようです。
東京、小倉では買い
コース別に見ると今のところ結果の出ているのは東京と小倉競馬場です。
特に東京競馬場での複勝率は四割を超えており、人気薄でも走ったりしているので狙ってもいいかもしれませんね。
このあたりはサンプルが増えてこないと断言はできませんが、これらの競馬場は道中の勢いで最後まで粘りこめるケースがあることが理由なのかもしれません。
デビュー戦を勝った馬は一頭のみ
これまで43頭がデビューして16頭が勝ち上がっていますが、デビュー戦で勝利したのはオヌシナニモ1頭のみです。
二着、三着だった馬がそれぞれ4頭と1頭いるので、走らないとは言いませんが、単勝ではとてもじゃないが買えません。ちなみにオヌシナニモノは単勝1.8倍とかなり人気を背負っていたのでリスクのほうが高かったことになります。
よってデビュー戦で中途半端な人気をしている馬は単勝では狙わないほうがいいと思われます。