エネイブル史上初の三連覇なるか
10月6日のフランス・ロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞について予想してみたいと思います。
今回は日本からキセキ(父ルーラーシップ)、フィエールマン(父ディープインパクト)、ブラストワンピース(父ハービンジャー)の三頭が出走がするということで注目が集まりますが、世界や海外競馬ファンの注目は昨年、一昨年とこのレースを制している女傑エネイブル(Enable:父Nathaniel)でしょう。
今年に入っても絶好調で、好メンバーの揃ったキングジョージ六世&クイーンエリザベスステークスでもクリスタルオーシャン(Crystal Ocean:父Sea The Stars)をマッチレースを退けて、圧倒的な力がまだまだ健在であることを見せつけています。
凱旋門賞を過去に連破した馬はエネイブル以外では六頭(クサール、コリーダ、リボー、タンティエーム、アレッジド、トレヴ)しかおらず、三連覇した馬はいません。
すでに歴史的名馬の一頭に肩を並べると言われているエネイブルが歴史的快挙を成し遂げるのか、そのライバルなどを含めて注目してみたいと思います。
(画像引用:Wikipedia「凱旋門賞」より)
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近年の凱旋門賞の傾向
牝馬が大活躍
牝馬の活躍は今回のエネイブルに限ったことではなく、ここ十年でもファウンド、トレヴ、ソレミアなど牝馬がのべ七頭制しています。
これは2010年以前にも牝馬の勝利はあったもののあくまで一部の馬にとどまり、調教レベルの向上などの結果もあり、斤量が有利に働いているのが理由だと言われています。
サドラーズウェルズ系の血は最低条件
先日このサイトでも傾向を調べましたが、上位入線馬にはかならずサドラーズウェルズ(Sadler’s Wells)の血が入っており、必須と言えます。
これはクールモアグループなど大手オーナーブリーダーグループが有力馬を多く送り出しているという原因もありますが、底力とスタミナを備えた血が絶対的に必要なレースとなります。
かつて日本馬で二着に入ったエルコンドルパサーの母の父もサドラーズウェルズでしたし、オルフェーヴルの母の父は日本が誇るスタミナと底力の代表格メジロマックイーン、ナカヤマフェスタの母の父も凱旋門賞連破を果したリボーの系統ということで、重厚な血がポイントとなります。
重厚な血だけでは勝てない
ただ面白いのはサドラーズウェルズなど重厚な血だけでは勝てない点で、特にスタミナとパワーを併せ持つイギリス・アイルランド系の血が強すぎる馬は結果を残せていません。
特に面白いのは現在のヨーロッパ種牡馬界の王様と言えるガリレオ(Galileo)が一度しか凱旋門賞を制していない点で、出走頭数を考えると若干相性が悪いと言えます。
重厚なイギリスの血にフランスで育まれた種牡馬や、ダンジグやキングマンボなどアメリカなどで結果を残した種牡馬の系統の血がミックスされた馬たちが非常に活躍しているのが面白いところです。
結局勝ちきるだけどのスピードも必要ということになります。
エネイブル Enable
父:Nathaniel 母の父:Sadler’s Wells
絶対的大本命
三連覇を目指す大本命ですが、僕もこの馬の本命は外せません。強いて言えば凱旋門賞を三連覇がいまだかつていないということだけというほど、今年も調子がいいですね。
血統は父がガリレオ産駒のナサニエル(Nathaniel)で母の父がサドラーズウェルズで全体的には少し重たいイギリス・アイルランド系の血統となります。
しかしながら、超一流馬に血統は関係ないと言うようにすでに二連覇を果たしている馬の血統のどこにケチをつける場所があるでしょうか。
ガリレオ直仔は凱旋門賞を若干苦手としているものの、孫世代だとその限りではありませんし、ナサニエルの母の父がシルヴァーホーク(Silver Hawk)という日本やアメリカで通用する血が入っているのがいい方向に働いているのかもしれませんね。
キセキ
父:ルーラーシップ 母の父:ディープインパクト
馬場は合いそうなもののスタミナ面が不安
次は日本馬三頭を見ていきたいと思いますが、まずは菊花賞馬であり、昨年のジャパンカップでアーモンドアイの二着に踏ん張ったキセキです。
この馬に関しては速いペースで先行して粘りこむのが特徴ですが、不安なのはスタミナ面です。
日本だと菊花賞を制しているようにどんな距離にも対応してきた同馬ですが、父ルーラーシップはキングマンボ系が相性がよくその母の父トニービンも凱旋門賞を制しているので合う種牡馬だとは思うものの、心配なのは母系です。
母の父ディープインパクトがスタミナを内在している種牡馬とは言っても、母の母は快速馬ロンドンブリッジでその父ドクターデヴィアスはどちらかと言えば重厚なスタミナ馬に軽さを与えるようなイメージの種牡馬です。
三代母の父もダンジグ(Danzig)で、はたしてかつてのエルコンドルパサーのように先行して粘れるかは疑問が残ります。
フィエールマン
父:ディープインパクト 母の父:Green Tune(ニジンスキー系)
母系がフランスの血で面白い存在
個人的にキセキよりちょっと面白いと感じるのがフィエールマンです。
母系もキセキと同様に重厚と言える血ではないものの、地元フランス色が強くて馬場に対する相性も良さそうなので、キセキよりはスタミナのロスがそれほどないのではないのかな?と感じます。
あとはディープインパクトの血がどう爆発してくれるかでしょうね。
強引なレースをすると最後まで持たない気もしますが、直線で瞬発力勝負になると一発ある血統だと思います。
ブラストワンピース
父:ハービンジャー 母の父:キングカメハメハ
最後まで踏ん張れるか
日本馬の三頭目は有馬記念の勝ち馬ブラストワンピースですが、個人的には凱旋門賞には合わないと思います。
これは血統どうこうというよりも脚質的な問題で、どうしても凱旋門賞で勝ち負けしようとすると直線で最後まで伸び続ける必要があります。
ブラストワンピースの菊花賞での敗戦と有馬記念での勝ちをみた個人的な感覚としてはこの馬の持ち味は立ち回りと一瞬の脚だと思います。
追って追って最後まで伸びるタイプではないので、勝ち負けするとなればどうしても好位抜け出ししかないと思うのですが、そう考えると血統的な裏付けが乏しい感じがしますね。
ただ、血統的にまったくだめかというと父は凱旋門賞と相性のいいダンジグ系のスタミナにシフトした種牡馬×キングマンボ系の配合で、母系に重厚さと底力を備えたエルグランセニョールがいるのはバランスがいいと思います。
できれば三代母の父エルグランセニョールと母の母の父フジキセキが逆だったらもっと面白かったなとは感じますね。
ジャパン Japan
父:Galileo 母の父:デインヒル
血統、サイン馬券両面で有力な存在
日本の馬券投票では実績面などからも上位に来そうなのがジャパンです。
ちなみに名前はジャパンですが日本とは何の関係もないようです(笑)が、この年の馬たちはオーナーブリーダーであるクールモアグループが有力馬に国名や地名にちなんだ馬名をつけているためにこの名前になったと思われます。他にはノルウェーやヒロシマ、ブルームなどがいます。
さて血統面ですが、ガリレオということで相性が悪いと言っても、例年人気しているガリレオ産駒は勝ちきれないというだけで結果は残しています。
そのため大崩れはないと思いますし、前走インターナショナルSではエネイブルと接戦を演じたクリスタルオーシャンに勝っている点も心強いですね。英ダービー後はGⅠ三連勝中です。
母系は母の父がデインヒルに対し母の母の父が80年代のフランスの名馬で凱旋門賞馬のサガス(Sagace)がおり、スピードや決め手の面でも安心です。バランスがよく非常に凱旋門賞に合うと思われます。
2019年はラグビーワールドカップ、2020年はオリンピックが行われる”ジャパン”という名前もいいですね(笑)。
ヴァルトガイスト Waldgeist
父:Galileo 母の父:Monsun
善戦マンでどこまで順位を上げられるか
地元フランスの馬で期待されるのがkのヴァルトガイストです。昨年は二番人気で四着でした。
プリンスオブウェールズSやキングジョージではエネイブル、クリスタルオーシャン、マジカルなどの後塵を拝しており完敗していますが、地元フランスで多少の巻き返しはあると思いますね。
僕が注目しているのは母の母の父がシャーリーハイツの系統という点で、凱旋門賞の好走馬によく見られるというのが何となく気になりますね。
ガリレオ産駒は序列があまり変わらない傾向にありますが、はたしてどこまで詰めてくるか地元の利に期待します。
ガイヤース Ghaiyyath
父:Dubawi 母の父:Galileo
凱旋門賞と相性の悪いドバウィ産駒
ヨーロッパではトップ種牡馬であるドバウィも凱旋門賞ではガリレオ以上に結果を残せていません。自身がマイラーであったように産駒もマイルから中距離で活躍している馬が多くやはり距離面での心配があるのではないのでしょうか。
ただ凡走したドバウィ産駒の多くがサドラーズウェルズ系の血をもっておらず、唯一好走したニューベイ(New Bay:2015年に三着)は祖母の父がサドラーズウェルズだったので、血統的にはこれまでのドバウィ産駒より期待できるような気がしますね。
ただ今年のガネー賞はヴァルトガイストに完敗しており、他に一線級との対戦がないのも不安ですね。
母のナイタイム(Nightime)は愛1000ギニー馬ですが、その後二戦大敗しており級に成長したというデータもありません。
フレンチキング French King
父:French Fifteen 母の父:Halling
実績はないものの鞍上はあのペリエ
ドイツのGⅠを勝利していますが、主要馬との対戦がなく力が読みにくい馬ですね。
父フレンチフィフティーンはノーザンダンサー系でもマイナーなナイトシフトの系統で、祖父は社台ファームで繋養されていたタートルボウルとなりますが、この系統のヨーロッパの産駒はマイラーが多いようです。
母系はホーリングやグリーンデザート、グルームダンサーといった活躍馬に見られる血はもっているものの、近年の一流馬がほとんど持っているサドラーズウェルズや名牝アーバンシーの血がないのでどうしても軽く見えてしまいますね。
鞍上が凱旋門賞で実績のあるペリエというのが怖いところですが、他に穴になりそうな馬がいないので、馬の調子もよく、押さえておいても面白いかもしれませんね。
ナガノゴールド Nagano Gold
父:シックスティーズアイコン 母の父:Monsun
悪くはないが推せる要素もない
父シックスティーズアイコンはスクリーンヒーローが勝ったジャパンカップにも参戦したガリレオの初年度産駒で英セントレジャー(GⅠ)の勝ち馬です。ただ凱旋門賞では六着、ジャパンカップでも十三着に敗れているように一線級相手では結果を残せなかった馬です。
母の父モンズーンはドイツの有力種牡馬でドイツやフランスを中心に活躍馬を送り出していますが、他の有力馬に比べると少し見劣りしてしまう血統ではありますね。少し底力の面で通用するか心配です。
実際にフランスの重賞戦線を走って大崩れはしていないものの、イマイチぱっとしない成績ではありますね。
マジカル Magical
今年は充実も使い詰めが心配
父;Galileo 母の父:Pivotal
昨年は十着(十六番人気)だったものの、それ以後のレースで充実した成績を残しており、おそらく昨年より順位を上げてくることが予想されます。
血統面では母の父が元々凱旋門賞と相性のいいヌレイエフ(Nureyev)系のピヴォタルで母の母の父がアホヌーラという配合でガリレオにほどよく柔軟なスピードを補強しているバランスのいい配合には感じますね。
実際に昨年のブリーダーズカップターフでエネイブルの二着と好走しています。
ただ心配なのは今年に入ってすでに七戦走っているのと、愛チャンピオンSは勝利はしているものの下さいた相手がアンソニーヴァンダイクやディアドラだったという点ですね。
エネイブルには数度にわたって完敗していることからも、突き抜けてくるかまでは期待しにくいところです。
ソットサス Sottsass
父:Siyouni 母の父:Galileo
血統面+未知の魅力
今年のフランスダービー馬です。父はフランスが誇るヌレイエフ系の新進種牡馬シユーニ(Siyouni)となります。
過去にもフランスダービー馬が何頭か凱旋門賞へ出走していますが、近年ではアンテロ(Intello)とニューベイの三着が目立つぐらいであまり活躍している印象はありませんね。
共通するのは近い所にサドラーズウェルズやガリレオの血がある点で、過去に凡走したフランスダービー馬の多くはフランスで育まれた血統というのが共通します。
そういった点で母の父にガリレオを持つ同馬は面白い存在に感じます。
ソフトライト Soft Light
父:Authorized 母の父:Kendor
追加登録予定も通用するかは?
10月1日時点では確定ではありませんが、Twitterなどの情報によるとソットサスと同じきゅう舎に所属するソフトライトが追加登録して、武豊騎手で出走するらしいということです。
三歳の牡馬となりますが、パリ大賞典(GⅠ)ではジャパンの五着、ドーヴィル大賞典(GⅡ)ではジヤード(Ziyad)の二着に敗れているものの、凱旋門賞に登録のあるナガノゴールド(三着)には先着していますね。
父は凱旋門賞馬でフランスの種牡馬としても活躍したモンジュー(Montjeu)産駒のオーソライズド。母の父はゼダーン系のケンドールでフランス色がかなり強い配合ですが、若干ローカルな感じがする配合で底力に欠けるかなという印象がありますね。実際にここまで勝ちきれないレースが多いようです。
母の母の父もアイリッシュリバーと若干血統がトレンドから少し遅れているかな?という感じもしますね。
→10月2日出走することが決定しました。
アンソニーヴァンダイク Anthony Van Dyck
父:Galileo 母の父:Exceed And Excel
勝負付けが終わった印象も母系はスピード血統で一変も
今年の英ダービー馬ですが、キングジョージは十着、愛チャンピオンSは三着と完敗しており、底が見えた感はありますね。
ガリレオ産駒はディープインパクト産駒と同様に秋になって一変というタイプでもないので、少し厳しいかなという感じはします。
ただまったく買えないわけでもなく、母系がデインヒル系のスピード種牡馬エクシードアンドエクセル(Exceed And Excel)×ゴーンウェスト(Gone West)という配合で日本でも通用しそうなスピード血統になっています。
実際に母親のBelieve’N’Succeedがオーストラリアで走って八戦二勝の成績を残しており、アンソニーヴァンダイク自体がイギリスやアイルランドのタフ過ぎる馬場が合わなかったという可能性も残します。
フランスでのレース経験がまだなく、未知の魅力で買ってみてもいい一頭ではあります。
→10月2日に回避が決定しました。
凱旋門賞予想
一応エネイブル本命で対抗にジャパンとしましたが、あくまでエネイブルの一強体制と見ます。
ジャパンは対抗勢力の一番手と見ますが、ヴァルトガイストやマジカルとは同程度の馬でありそこまで絶対的な馬でもないと思いますね。このあたりは場所やレースをやるたびに順位が変わってくると思いますし、マジカルは好走はするものの勝ちきれないと見て五番手あたりとしているだけです。
あとは夏ごろはジャパンてそんなに強くないかな?と感じていたので、仮にエネイブルが敗れるとしても勝つのはこの馬ではないと思います。あくまで大崩がなさそうという立ち位置です。
もしエネイブルの三連覇がならないとなるとフランスにゆかりのあるヴァルトガイスト、ソットサス、そして大穴でフィエールマンあたりかなと予想します。
◎ エネイブル
〇 ジャパン
▲ ヴァルトガイスト
△ ソットサス
× マジカル
穴 フィエールマン、フレンチキング