昨日は第79回桜花賞(2019年4月7日、阪神競馬場、GⅠ、芝1600m、外回り)に向けてステップレースやトライアルレースなど、参考になりそうなレースを振り返ってみましたが、本日は出走予定馬の血統を見ていきたいと思います。
現時点では19頭が登録しており、すべての馬を見ていくのは中々難しいので、有力馬や有力血統などを優先しながら順番に見ていきたいと思います。
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まずは何と言ってもこのレースには抜群の相性を誇るディープインパクト産駒から見ていくことにしましょう。
ダノンファンタジー
父:ディープインパクト 母の父:Not for Sale(フォルティノ系)
父ディープインパクトはクラッシックに抜群の相性を誇る説明不要の大種牡馬ですが、この桜花賞、特に阪神の芝1600mなんかは特に得意としている種牡馬です。
名手だった藤田伸二元騎手のYouTubeの動画チャンネルなどを見ていると、桜花賞などはコースの形状などからも道中は我慢して直線勝負になりやすいそうなので、特に切れ味に優れたディープインパクト産駒が活躍しているのでしょう。
母系を見るとこのダノンファンタジーは少し特殊です。
母系はアルゼンチンで育まれた血統のようで、母の父Not for Saleも含めてアルゼンチン産の馬のようですね。ちなみにアルゼンチンはダートが主体のレースのようです。
そのため少しイメージはしにくいところですが、母の父はナスルーラからフォルティノ、カロにつながる80年台から90年台にヨーロッパで活躍した系統で、母の母の父はIcecapade(アイスカペイド)の系統、三代母の父はLyphard(リファール)の系統と、一応当時の主流血統が配されています。
ダノンファンタジーの母ライフフォーセールはアルゼンチンでGⅠ二勝を含む八勝をした一流馬ということもあり、時にこういう亜流の血が入ることによって大物が生まれることもあるので走るのも納得なんですが、心配な点は母系に日本向きのスプリント力のある血がないので、極限の瞬発力勝負になった時は少し心配かなという印象を受けます。
ただダノンファンタジー自体は素直な走りをしている感じなのである程度自分でレースのコントールが可能そうなので、桜花賞に関してはそこまで評価を下げる部分ではなさそうですね。
血統評論家の亀谷敬正(かめたにたかまさ:年下ですが僕も彼の理論には賛同する部分が多いです)さんによると桜花賞はフランスのレースを得意とする種牡馬(ミルリーフなどナスルーラ系)の血を持つ馬が活躍しているそうですが、母の父はずばりナスルーラ系で三代母の父Ghadeer(ガディア)もフランス産の競走馬(引退後はブラジルで種牡馬入りし、リーディングサイアーに輝いたこともある)なのでこのパターン該当するのは心強いところです。
血統や条件的には桜花賞ぐらいまでは好走してくれそうですが、血統的なバランスとしてはナスルーラの血が近くトレンドには少し外れるので、今後はどこかで大敗してから安定感を少しづつ欠いていくというパターンにはなりそうです。
グランアレグリア
父:ディープインパクト 母の父:Tapit(Seattle Slew系)
ダノンファンタジーの対抗馬として期待されるグランアレグリアですがこちらもディープインパクト産駒です。
しかしながらダノンファンタジーがアルゼンチンの母系なのに対してこちらは北米色の強い配合になっています。
母の父タピットはアメリカが誇るシアトルスルー(ボールドルーラー)系の大種牡馬であり、日本で走った産駒は勝ち馬率が8割というとんでもない数字を残しています。
本来はダートを得意としているものの母タピッツフライ自身はBCジュヴナイルターフをはじめとして芝のレースで好成績を残していますね。母の母の父Marlin(マーリン:ニジンスキー系)が芝で活躍した一流馬なので、タピッツフライはこのあたりの影響を強くうけている可能性があります。
母系が少し中距離寄りの感じは受けますが、タピットみたいな気の強い系統はストームキャット系と同じく、母系に入って底力を見せるのではないかと個人的には感じているので、勝ちきるだけの底力はあるように思います。
ただ反面気の強さがどこかで顔を出しはじめると、ラビットランのように突然普通の馬になってくるような予感もするので、信頼度という点では少し疑わしい部分もありますね。
全体的には潜在的なスピード面で少し心配ではあるものの、おそらく血統的な仕上がりの早さで現在は他を上回っているのではないかと感じます。
ダノンファンタジーよりオークスに対する適性はありそうですが、両馬とも秋以降はちょっと信頼しづらいかな?と見ます。
シェーングランツ
父:ディープインパクト 母の父:Monsun
今年の牝馬クラシック戦線では武豊騎手の相棒となりそうなシェーングランツですが、ソウルスターリングの二歳下の妹であり、一歳時からテレビで取り上げられていたので僕もよく覚えている馬です。確か当時の育成段階では社台の育成部門からかなりの評価を得ていました。
血統面としてはソウルスターリングの下なので評価はしやすく、やはり姉同様スプリント力に心配は残ります。瞬発力勝負は不得手でしょうし時計はかかったほうがいいタイプですね。
ソウルスターリングの父が怪物フランケル(父ガリレオ)からディープインパクトに変わり、スピードや瞬発力がどう出るか僕も注目していたのですがやはり母の父モンズーンなどの血が重たく、日本向きのスピードをもった血が母系に少ないのが弱点ですね。
ただ、フランケルよりディープインパクトのほうが日本に対する相性・実績は間違いなく高いので、ここ一番で母や姉のような能力が開花すれば血統面からは侮れない一頭ではあります。(あくまで血統面からですがね・・・実際の走りは少しのんびりしているので桜花賞向きではないような印象を受けます)
ノーブルスコア
父:ディープインパクト 母の父:Dylan Thomas(デインヒル系)
叔母はなんと昨年の凱旋門賞で一番人気(結果は二着)だったシーオブグラスであり牝系はヨーロッパでもおそらく一流です。
母の父がデインヒル系のディラントーマスで、さかのぼっていくと実はエルナンド、カーリアン(いずれもニジンスキーの系統)と三代続けてノーザンダンサー系の種牡馬がつけられています。
僕はあまりインブリードがどういった影響を与えるかについては少し懐疑的なわけですが、ノーザンダンサーの中でも少し硬派なタイプの血ばかり揃っているので、テンプレートどおりの切れ味を武器とするディープインパクト産駒というよりもノーザンダンサー系のイメージでとらえておいたほうがいいのかもしれません。
こういったタイプは、決め手勝負になると少し厳しいのではないかと思います。
レッドアステル
父:ディープインパクト 母の父:Smart Strike(Mr Prospector系)
あまり話題にはなっていませんがかなりの良血馬で不気味な一頭です。
母の全兄はアメリカを中心とした芝レースで活躍し、2007の芝チャンピオンにも輝いたEnglish Channel(イングリッシュチャンネル)。種牡馬入りした後も芝レースで王者キトゥンズジョイに次ぐ成績をあげている僕も注目している種牡馬です。
ミスタープロスペクター系の中ではキングマンボ系と同様芝への対応力のある系統で、日本の芝でも十分対応できるのではないかと予想しますし、ミスタープロスペクター自身に血が近いのも好感が持てます。
母の母の父シアトリカルはヌレイエフ系の中距離馬ですがディープインパクトにミスタープロスペクター系の母の父にヌレイエフを持っており、成長次第では十分大きいところを狙える配合です。
ただ、どちらかと言えば中距離向きかな?という感じもします。
クロノジェネシス
父:バゴ 母の父:クロフネ
種付け料50万円とも言われるバゴですが、現役時代は凱旋門賞を制したほどの超一流馬で、父はイギリスで大活躍したあのナシュワンです。
バゴの産駒にビッグウィーク(菊花賞)などがいるようにスピードよりもパワーのいる洋芝を得意とし、距離はある程度あったほうがいいタイプだとは思いますが、そこは母系がうまくカバーしておりクロフネ、サンデーサイレンス、ミスタープロスペクターといかにも素軽そうな種牡馬が並びます。
またノーザンファーム出身馬らしく近親にはフサイチエアデール(今回出走するビーチサンバとも親戚筋にあたります)など良血馬がならび姉も昨年の紫苑S(GⅢ)を制したノームコア(父ハービンジャー)です。不遇をかこっているバゴにとっては良さを十分出せそうな配合ですね。
全体的な血統の印象としては、少し器用さには欠けそうな印象はあるものの、我慢比べやスタミナ勝負のような展開になると持ち味を発揮しそうな印象で、スローよりもある程度ハイペースでこそ持ち味が発揮できそうな気がします。そういった意味ではある程度相手が強いほうが持ち味が出させるかもしれませんし、逆に相手が弱くなっても取りこぼしなどもありそうです。
本質的には、瞬発力勝負になると分は悪いでしょうが一発はある血で、今後は大舞台で活躍する可能性もあるでしょう。(ただ、わけの分からない敗戦もありそうです)
そういう意味ではクイーンカップではかなりの切れ味を発揮しており、もしかしたら相当強い馬である可能性があります。
問題は忙しくなる阪神の1600mでうまく立ち回れるかという点ですが心配はこのあたりですね。
ビーチサンバ
父:クロフネ 母の父:サンデーサイレンス
クロフネ×サンデーサイレンスという配合でホエールキャプチャやアエロリットと似たような配合(アエロリットは母の父がネオユニヴァース)です。
しかも母は重賞戦線で長く活躍した名牝フサイチエアデールということで期待は高まります。また前述のクロノジェネシスも近親にあたります。
血統的にはクロフネらしい軽さを武器にしたいかにもスピードタイプという感じですが、弱点はもまれ弱い点でとんでもなく強い勝ち方をしたと思ったらコロッと負けたりするところであり、いまいち人気になっても信用しずらい点ですね。
こういった血統の馬は得意な条件をいかに早く見つけるかが鍵となりそうですが、自分でコントロールするよりも、思い切って自分の競馬に徹したりすると一発がありそうで油断ができません。
お母さんもフサイチエアデールですし血統的に詰めは甘そうです。
アクアミラビリス
父:ヴィクトワールピサ 母の父:Anabaa(Danzig系)
姉はクイーンズリングとこれまた良血馬です。父はマンハッタンカフェからヴィクトワールピサに変わり、仕上がりは早くなっていそうです。
父ヴィクトワールピサはまだそこまで大物が出てきていないので判断は難しそうですが、その父ロジユニヴァースなどから推測すると、武器は仕上がりの早さとここ一番での強さですね。
弱点は時計勝負に弱い点で高速馬場は明らかに不得手ですね。このあたりが古馬よりも二歳戦や三歳春で活躍が目立つ理由でしょう。このあたりはダイワメジャーとよく似ていますが、ダイワメジャー産駒ほどの前向きさがないのでスピード豊富な感じはしません。
アクアミラビリスの配合自体は母系がスピード型×ヨーロッパ系底力型で走る馬によくある配合なんですが、スピードや瞬発力というよりも乱戦向きの父系なので、有力馬がしっかりと自分の形をもっている今回の桜花賞は少し厳しそうな印象です。
エールヴォア
父:ヴィクトワールピサ 母の父:ワイルドラッシュ
エールヴォアもヴィクトワールピサ産駒となりますが、こちらは母の父がワイルドラッシュに変わりスピードよりも前向きさのあるパワー型にシフトしたような印象です。
単純な比較だとアクアミラビリスのほうが個人的には好印象なんですが、母系はサッカーボーイやステイゴールドにつながる牝系なので怖さはありますね。
ただ母の母の父もトニービンでどうしても軽いスプリント系の血がないのが気になります。
ルガールカルム
父:ロードカナロア 母の父:サンデーサイレンス
今年もロードカナロアはしっかりと桜花賞に産駒を送り込んできましたが、アーモンドアイといい母の父サンデーサイレンスというのは今後の定番になってくる可能性は高そうですね。
ただあまりにもサンデーサイレンスやサンデーサイレンス系の牝馬が多いので名前だけで、母の父サンデーサイレンスの傾向をつかむのはなかなか難しそうであり、母の母の父まで見ていかないといけませんね。
本馬の母サンデースマイルはサンデーサイレンス産駒ながらイギリスで走った逆輸入馬のようですが、現役時代はイギリスで未勝利戦を勝っただけの成績のようです。祖母はアメリカの二歳牝馬チャンピオンで素性はしっかりしていますが、母の父ソヴィエトスター(ヌレイエフ産駒で世界的マイラーのミエスクのライバル)ということからも、マイル前後が得意そうです。
そう考えるとアーモンドアイよりは距離適性が短めになるような感じはしますね。
ソヴィエトスターは日本でも一時期供用されていましたが、確か結果はあまり残せていませんし、祖母はアメリカの二歳チャンピオンということからも、現時点では仕上がりの早さで結果を残せている可能性もあり、全体的な血統バランスはいいものの、現状は情報となるようなサンプルが少なく経過観察という中途半端な評価になってしまいますね。
ただ馬主のサンデーレーシングの募集価格があまり高くない(60万×40口)ので、馬っぷりはあまりよくないのかもしれません。
シゲルピンクダイヤ
父:ダイワメジャー 母の父:High Chaparral(Sadlers Wells系)
チューリップ賞では直線ものすごい脚で追い込んできたシゲルピンクダイヤですが、血統上はそれほど決め手に優れたタイプだとは思えません。
実際にチューリップ賞は勝ったダノンファンタジーには一馬身差がついているので、逆にあの脚色で交わせないところが血統的な限界のような感じがします。
母系はアイルランドの系統で決して日本の馬場に対応できるようなスピードに優れたタイプではないので、ダイワメジャーの血が強く出ていると考えると、やはり少しぐらい時計がかかったほうが良さが活きてくるタイプですね。
勝ち負けするには馬場が湿ってハイペースになるような馬場や展開の助けがどうしても必要に感じます。
ノーワン
父:ハーツクライ 母の父:Caerleon(Nijjinsky系)
桜花賞トライアルのフィリーズレビューでは強引な騎乗はあったものの、プールヴィルと同着だったノーワンです。
ハーツクライと言えばどちらかと言えば牡馬の活躍が目立ちますが、牝馬のクラシックだとリスグラシューやヌーヴォレコルトの活躍が思い浮かぶぐらいですね。
元々ハーツクライ産駒の活躍馬は総じて母系にスプリント力のあるスピード血統を持っていることがほとんどなんですが、ノーワンの母系は母の父がパワーやスタミナ、底力を武器とするカーリアンで母の母の父もサドラーズウェルズと、残念ながら一流馬の血統構成とは若干異なります。
残念ながら桜花賞は少し忙しいように感じますね。東京コースで行われるフローラSあたりのほうが血統的には合っていたと思います。
プールヴィル
父:Le Havre 母の父:Kendargent(ゼダーン・グレイソヴリン系)
一方のプールヴィルですが、フランスからの持ち込み馬でありあまり見慣れない血統構成になっています。
父Le Havre(ルアーヴル)はフランスダービー馬でブラッシンググルーム系のラーイの血を引き、母の父はトニービンなどにつながるゼダーン系のKendargent(ケンダルジャン)の血を引いています。
僕もなじみのない血統なのであくまで予想になりますが、ルアーヴルはフランス2000ギニーも二着に来ていますし、フランスダービーは日本と違い距離は短い(2100m)なのである程度スピードはありそうです。
母の父Kendargent(ケンダルジャン)もあまり情報がないのですが、二歳戦を中心に活躍馬を出しているようで、プールヴィルのははケンホープもGⅠで二着に入るなど血統的な下地はありそうです。
マイナス面を見るとすれば、スピードはあると言っても日本独特の高速馬場に完全適応するまでは行かないでしょうし、決め手勝負や時計勝負になるとやはり厳しいでしょう。またラーイは早熟さで勝負していたような種牡馬なので、母の父ケンダルジャンが二歳戦で活躍していたこともあり、もしかしたら仕上がりの早さで勝負する馬という見方もできますね。
ジュランビル
父:キンシャサノキセキ 母の父:Deputy Minister(Vice Regent系)
フィリーズレビューの三着馬のジュランビルですが、これはもうパワー型の典型のような血統構成ですね。軽さはあるものの、時計が少しかかるような馬場やダートを得意とする血統構成ですし、フィリーズレビューのような三歳戦の1400mのやや重はいかにもはまりそうな血統でした。
これまでキンシャサノキセキの産駒は繁殖牝馬には恵まれていないものの頑張っているような印象派受けますが、やはり父フジキセキほどの底力は感じず、全体的に揉まれ弱い血が多いので少し厳しいだろうなという印象です。
※徐々に追記していきます