海外の種牡馬について語る場合、その産駒実績は”多数のGⅠホースを送り出している”とか”数々のステークスウィナーを出している”といった形容詞が多く見られますが、実際にそのレースの名前を見てもほとんどの場合がよく知らないレースというのがほとんどだと思います。
またそれがGⅠレースであっても実際にはクラシックに挑む前段階のトライアルレースのような位置づけであったり、賞金も30万ドル程度と日本のGⅢぐらいの賞金というケースもよくあります。かくいう僕もよく聞くレース以外だと、果たしてそれがどの程度の格のレースであるか即答できません。
そこで今回は自分自身の勉強のためにもまとめてみることにしました。
今回はアメリカ競馬についてです。
まずアメリカのGⅠですが、何と調べてみると110以上存在するようです(笑)。まとめ方に悩みますが、賞金額やクラシックレースなどを中心にまとめていきたいと思います。もちろんマイナーなGⅠはスルーします。
最強馬決定戦
ペガサスワールドカップ(GⅠ)
2017年より新設されたガルフストリームパーク競馬場で行われる世界最高クラスの賞金額で行われるレースです。
第一回と第二回はレースへの登録に100万ドルが必要で、総賞金額1200万ドル、1着賞金700万ドルの条件で行われましたが、2019年の第三回からペガサスワールドカップターフ(GⅠ)の新設にともない、登録料50万ドル、総賞金額は900万ドル1着賞金は400万ドルに下がっています。
1月末にで、4歳以上、ダート9ハロン(約1,800m)の条件で行われます。
このレースにより、元々2月第一週に同条件で行われていたドンハンデキャップ(GⅠ)が休止となりました。
第一回目は最強馬Arrogate(アロゲート)が人気に応え勝利しています。
2020年からはレースへの登録料システムなどが廃止され、賞金総額も300万ドルへ大幅減額されているので、レースの格は完全に下がったという印象は受けますね。2020年の出走メンバーも少し落ちていたという印象でした。
ブリーダーズカップ・クラシック(GⅠ)
アメリカ競馬の一年の締めくくりとして行われるレースでありお祭りとなるのがブリーダーズカップとなります。しかしながらこのブリーダーズカップもたくさんの種類があり、素人には大変分かりにくいのですが、その中でも一番格が高く最後に行われ、事実上のアメリカ競馬の最強馬決定戦にあたります。日本で言うと有馬記念ですね。
3歳以上ダート10ハロン(約2,000m)で行われ、一着賞金は330万ドルとなります。(※二年間だけダートではなくオールウェザーで行われました)
ダートでありながら1分59秒台で決着することもあるとんでもないレースです。(ただしアメリカのダートは砂というより土に近いと言われるので一概に比較はできませんが・・・)
ブリーダーズカップ・ターフ(GⅠ)
アメリカ競馬においてはスピードのある馬はまずダートレースに進み、そこで結果が出なかった馬が芝のレースに進むようですが、芝のレースもしっかりと行われています。
そして上記のブリーダーズカップ・クラシックに次ぐと言われているのがこのターフなんですが、このレースにはヨーロッパから有力どころも参戦してくるので、非常にレベルが高いレースであり、アメリカで行われる芝レースの中で一番格が高いことに間違いはないでしょう。
3歳以上、芝12ハロン(約2,400m)で一着賞金は165万ドル。距離を見ても完全にヨーロッパの馬を意識していますね。
三歳牡馬クラシック戦線
ケンタッキーダービー(GⅠ)
アメリカの牡馬クラシック第一弾はいきなりダービーとなり5月第一週に行われます。毎年チャーチルタウン競馬場で行われ、ダート10ハロンで行われます。
一着賞金は142万5000ドル。
プリークネスステークス(GⅠ)
ケンタッキーダービーの二週間後の5月第三週に行われるクラシック第二弾。
ダート9.5ハロン(約1,900m)で行われ、一着賞金は150万ドル。
ベルモントステークス(GⅠ)
プリークネスステークスの3週間後の6月第一週に行われ、三冠がかかるレースとなります。
ダート12ハロンで行われ、1着賞金は80万ドル。伝説の名馬Secretariat(セクレタリアト)はこのレースを2分24秒1で走り、31馬身差の勝利というとんでもレースをしました。通常2分28秒程度のタイムで決着することを考えると、これぐらい開くのも納得です。
トラヴァーズステークス(GⅠ)
毎年8月ごろに行われるレースであり三冠レースに次ぐレースだと言われています。
ダート10Fで行われ一着賞金は67万ドル。真夏のダービーとも言われています。
※チャンピオンシップシリーズ
クラシック第一弾のケンタッキーダービーは日本の賞金額ではなく、対象となるレースによるポイント制により優先出走権が与えられます。主だったところでは下のレースがあります。ちなみに日本のヒアシンスステークス(他2レース)の勝ち馬にもポイントが与えられます。
フロリダダービー(GⅠ)
ガルフストリームパーク競馬場で行われ、ダート9F(約1,800m)のレースとなります。1着賞金は60万ドル、獲得ポイントは100pt。
ダービーに出てくるような有力馬の成績なんかではよく見るレースです。
東海岸の有力馬が集まり、三冠レースへの影響力も強いレースとなり、このレースを勝った馬がケンタッキーダービーに出走した場合、かなりの確率で勝利していますね。
ただプリークネスステークスとの相性は悪いみたいです。
ウッドメモリアルステークス(GⅡ)
ダート9Fで1着賞金は45万ドル、獲得ポイント100pt。
かつてはGⅠレースでしたが2017年よりGⅠからGⅡに格下げされています。
ブルーグラスステークス(GⅡ)
ダート9Fで1着賞金は60万ドル、獲得ポイント100pt。
このレースもウッドメモリアルSと同様2017年にGⅡに格下げされています。
サンタアニタダービー(GⅠ)
サンタアニタ競馬場ダート9Fで行われ1着賞金は60万ドル、ポイントは100pt。
東海岸で行われるレースが多い中、四月に西海岸で行われる唯一の三歳のGⅠレースとなります。
古くはアファームド(1978年)やサンデーサイレンス(1989年)がこのレースを勝ち、ケンタッキーダービーに勝利していますが、最近だと2014年のCalifornia Chrome(カリフォルニアクローム)、2018年のJustify(ジャスティファイ)など超大物がこのレースを勝利して、本番も勝利していますね。
アーカンソーダービー(GⅠ)
ダート9Fで行われ1着賞金は60万ドル、ポイントは100pt。
アメリカ中東部のアーカンソーで行われるGⅠレースとなりかつてはGⅡレースでしたが、2010年よりGⅠになっています。
三歳牝馬戦線
20年前のイメージではいけないと調べなおしてみると三冠の位置づけが昔と変わっているようです。
ケンタッキーオークス(GⅠ)
一着賞金56万4,200ドル。5月の第一週、ケンタッキーダービーの前日に行われるレースですが、ご覧の通り三冠レースではないようです。
しかしながら賞金額では、これらのレースより多いので恐らくこのレースが三歳牝馬限定のレースでは一番レースの格が高いと推測されますね。
エイコーンステークス(GⅠ)
牝馬三冠シリーズ第一弾であり6月の第三週に開催されます。ダート1マイル(約1,600m)で行われ、一着賞金は40万ドル。
コーチングクラブアメリカンオークス(GⅠ)
通称CCAオークスと呼ばれており牝馬三冠の第2戦。ダート9ハロンで7月の第四週に行われます。一着賞金は18万ドルと少ないですね。
アラバマステークス(GⅠ)
牝馬三冠レースの最後のレースとなり8月の第四週に行われます。ダートの10ハロン戦で一着賞金は36万ドル。
昔牝馬の三冠レースはこのレースではなくマザーグースステークスが入っていたんですが2010年よりこのレースが三冠レースとなったようです。
こうして調べてみると牡馬の日程がかなり詰まっているのに牝馬の三冠は適度な間隔があいていますね。
三歳芝戦線
ベルモントダービー(GⅠ)
7月のはじめにベルモントパーク競馬場で行われるレースであり、2019年からニューヨーク三歳芝三冠レース、通称”ターフトリニティ”の初戦となりました。
芝10ハロンで行われ、1着賞金は53万5,000ドルの高額レースです。
正式にはベルモントダービーインビテーショナルステークスと言います。日本ではベルモントダービー招待ステークスとか表現されておりややこしいですが同じレースです。
2003年まではダートで行われていました。
サラトガダービー(※)
2019年から新設されたレースで、芝三冠レース第二戦となります。
8月のはじめにサラトガ競馬場で行われます。
芝9.5ハロンで行われます。1着賞金は53万5,000ドル。
新設されたレースのためグレード認定はされていないようですね
ジョッキークラブダービー(※)
芝三冠レース最終戦は9月初めに行われます。1着賞金は53万5,000ドル。
芝12ハロンで行われますが、距離はクラシック(ダート路線)とまったく同じに設定されているそうです。
勝ち馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。
このレースの新設されたレースのようです。
ベルモントオ―クス(GⅠ)
牡馬と同じように2019年からはじまる芝三冠レースの牝馬版通称”ターフティアラ”の初戦です。
ベルモントパーク競馬場で芝10ハロンで行われます。
1着賞金は40万ドルとなります。
三歳牝馬限定。
サラトガオークス(※)
新設レースとなります。”ターフティアラ”第二戦。
サラトガ競馬場で芝9.5ハロンで開催されます。
1着賞金は40万ドルとなります。
三歳牝馬限定。
ジョッキークラブオークス(※)
“ターフティアラ”最終戦。
ベルモントパーク競馬場で開催され、条件は芝11ハロン。
1着賞金は40万ドルとなります。
三歳牝馬限定。
セクレタリアトステークス(GⅠ)
8月の2週目に行われるレースで三歳限定芝10ハロンで行われます。1着賞金24万ドル。
同日には同競馬場で3歳以上の古馬との混合レースアーリントンミリオンステークス(GⅠ)も同条件で行われます。
ハリウッドダービー(GⅠ)
ブリーダーズカップも終わったあとの11月第4週に東海岸デルマー競馬場で行われるレースであり、三歳の芝馬の最強馬決定戦となります。
芝10ハロンで行われ、一着賞金は18万ドル。
アメリカンオークス(GⅠ)
芝10ハロンで行われ、一着賞金は15万2800ドル。三歳牝馬限定のレースとなり、12月の最終週に行われます。
日本のシーザリオが勝ったレースとして有名ですが、オークスとはついているものの芝のレースであり、三冠レースではありません。また、シーザリオが勝った当時は7月に行われ、名前もアメリカンオークス招待レースという名前で開催されていました。
当時の優勝賞金は40万ドルと高額で今より格は高かったようですね。
古馬ダート戦戦
サンタアニタハンデキャップ(GⅠ)
3月第一週に西海岸で行われるレースでありドバイワールドカップの叩き台として使われることが多いそうです。
ダート10ハロン、一着賞金は45万ドル。
ホイットニーステークス(GⅠ)
7月の第四週に行われ、勝ち馬はBCクラシックへ自動登録されます。距離9ハロンで一着賞金は65万ドル。
ウッドワードステークス(GⅠ)
8月第四週に行われるレース。9ハロンで一着賞金は45万ドル。
2017年にBCクラシックを制したGun Runnerがこのレースをステップレースとして使いました。
パシフィッククラシックステークス(GⅠ)
8月第四週に西海岸で行われる重要なレース。今年はアロゲートが出走しましたがCollectedの二着に敗れています。
ダート10ハロン、一着賞金は60万ドル。
ジョッキークラブゴールドカップステークス(GⅠ)
9月第四週にベルモントパーク競馬場で行われます。
通称”ジョッキークラブ金杯“と言われ権威あるレースとなり、過去にはシガーやカーリンなど超一流馬もBCの前哨戦として出走して勝利しています。
ダート10ハロン、一着賞金は60万ドル。
古馬芝戦線
BCターフが頂点となりますが、当然芝のレースも行われています。
ペガサスワールドカップターフ(GⅠ)
2019年から新設されたレースであり、ダート最強馬決定戦の前述のペガサスワールドカップ(GⅠ)と同日(一月の四週目)に同競馬場で芝9.5ハロン(1900m)で行われます。
登録料は50万ドル、1着賞金は300万ドルとなっており、第一回は日本からアエロリットも参戦しました。(結果は9着)
2020年からは賞金総額が100万ドルに下がり、完全に格落ちしました。
ターフクラシックS(GⅠ)
2019年の年度代表馬ブリックスアンドモルタル(Bricks and Mortar)がこの年に走ったレースです。その前年はハーツクライ産駒のヨシダ(Yoshida)が勝利したレースしています。
2018年まで賞金総額は50万ドルだったようですが、2019年は100万ドル(一着は65万ドル?)に増額されていますね。
ケンタッキーダービーと同じ五月の第一週に同じ競馬場のチャーチルタウン競馬場で芝9ハロン(1900m)の条件で行われます。
“ジョーハーシュターフクラシックS”など似たような名前のレースがいくつかあるので、僕はいつも混乱しています(笑)。
マンノウォーステークス(GⅠ)
かつては10月ごろに開催されていましたが、開催時期が7月、次いで5月と変わりレースの格が落ちてきた印象があります。
一着賞金は30万ドル。芝11ハロン(約2,200m)で行われます。
ちなみに名前が冠されているマンノウォーは芝のレースに出たことがありません(笑)。
マンハッタンステークス(GⅠ)
6月第一週にベルモントパーク競馬場で行われるレースであり、同日には三冠レースのベルモントステークスが行われます。
芝10ハロン、1着賞金は65万ドルで有力馬が集まります。ハンデ戦。
ユナイテッドネーションズステークス(GⅠ)
7月第一週に東海岸ニュージャージー州のモンマスパーク競馬場行われるレースで芝11ハロンで行われます。
一着賞金は30万ドル。勝利馬にはBCターフへの優先出走権が与えられるので重要なレースとなります。
ソードダンサー招待ステークス(GⅠ)
8月第一週に東海岸のサラトガ競馬場で芝12ハロンで行われるハンデ戦で、一着賞金は30万ドル。
正式名称はソードダンサーインビテーションステークスと言いますが、ソードダンサー招待ハンデとかソードダンサーステークスとか色々なところで表記が違いますね。結構調べるのは苦労します(笑)。
フォスターデイブハンヴキャップ(GⅠ)
8月第二週ソードダンサーステークスと同じ競馬場で行われるレースであり、同日には中央部でアーリントンミリオンステークスが行われます。
芝1マイル、一着賞金は30万ドルで短距離路線になりますね。2016年にGⅡからGⅠに昇格しています。
アーリントンミリオンステークス(GⅠ)
8月第二週に中央部のイリノイ州アーリントンパーク競馬場で行われる芝10ハロン戦です。優勝賞金56万4,000ドル。
同日には三歳限定の同条件ででセクレタリアトステークスが行われます。
ソードダンサーステークス(GⅠ)
8月の第四週に行われBCターフの出走馬にとっても重要なレースになります。
芝12ハロン、一着賞金は53万5000ドルと芝のこの時期のレースとしてはアーリントンミリオンSと同様高額賞金のレースとなります。
ジョーハース・ターフクラシック招待ステークス(GⅠ)
9月の第四週にベルモントパーク競馬場で行われるレースでありBCターフのプレップレース(前哨戦)となります。
芝12ハロン、一着賞金は36万ドル。
古馬牝馬戦線
コンティリオンステークス(GⅠ)
9月第三週に行われるダート8.5ハロンのレースで一着賞金は56万4000ドルと、この時期の牝馬限定戦としては高額。
3歳牝馬の三冠レースが終わった後に開催されるレースのため豪華なメンバーがあつまり、BCディスタフの前哨戦となります。
二歳馬戦線
ブリーダーズカップ・ジュベナイル(GⅠ)
11月1週目に行われるブリーダーズカップシリーズで2歳牡馬およびせん馬王者決定戦。
ダート8.5ハロン(約1,700m)、一着賞金は110万ドルで二歳馬のレースとしては最高賞金となりますね。
ブリーダーズカップ・ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)
2歳牝馬の女王を決める戦い。BCジュベナイルと同じくダート8.5ハロンで一着賞金も同じ110万ドルとなります。
ブリーダーズカップ・ジュベナイルターフ(GⅠ)
2歳牡馬の芝王者決定戦。1マイル行われ一着賞金はBCジュベナイルの半分の55万ドルとなり、やはりダートのほうが重要視されているのは一目瞭然ですね。
ヨーロッパからの参戦が多くアメリカの馬があまり勝っていませんね。
ブリーダーズカップ・ジュベナイルフィリーズターフ(GⅠ)
2歳牝馬の芝女王決定戦。BCジュベナイルターフと同じく1マイルで一着賞金55万ドル。こちらはアメリカの馬がのほうが勝っていますね。
ロスアラミトスヒューチュリティ(GⅠ)
旧ハリウッドヒューチュリティと呼ばれていたレースであり12月の第3周に行われます。
ダート8.5ハロンで行われ、数少ない二歳GⅠなので重要なレースとなります。一着賞金は30万ドル。