昨年はキズナの成功を的中
少し早いのですが、2020年に産駒が新しくデビューする新種牡馬の傾向を予想していきたいと思います。
2019年はキズナとエピファネイアという二枚看板がいて注目の年でしたが、ノーザンファームの生産馬はエピファネイアのほうがキズナ産駒より多かったものの、血統的ポテンシャルを信じて成功すると書いたら、予想以上に成功して少し鼻の高いわたくしです(笑)。(→ 2019年の新種牡馬とその傾向予想)
一方のエピファネイアに関しては若干苦労するのではないかな?と思っていたわけですが、勝ち上がり率は思ったより高かったものの、キズナの成功に比べるとやはり地味な印象があり、種牡馬傾向の予想としては正解だったと思います。(決してエピファネイアの失敗を期待しているわけではないのですが・・・)
さて2020年ですが、今年はモーリス(父スクリーンヒーロー)という超大物がいるほかドゥラメンテ(キングカメハメハ)などもおり、昨年並みに面白そうな種牡馬が産駒のデビューを控えます。
加えて輸入種牡馬としてクリエーター(Creator Ⅱ)、ディスクリートキャット、マクフィなどがいますが、これらがどういった活躍をしていくのか傾向などを含めて予想してみます。
POGなどの参考にしてもらえればと思います。
Contents
モーリス
父:スクリーンヒーロー 母の父:カーネギー(Sadllers’s Wells系)
繋養先:社台スタリオンステーション
大物は出てくるだろうがスロースターター?
2020年に産駒がデビューする新種牡馬の代表格はやはりGⅠ6勝(海外2勝)のモーリスですね。実績面では圧倒的とも言えますし、社台SSで繋養されており大本命種牡馬です。
初年度は265頭もの繁殖牝馬に種付けされているだけでなくシーザリオやジェンティルドンナ、ブエナビスタを始めとするノーザンファームがほこるGⅠホースや、一流牝馬たちと種付けが行われているようです。
現在僕が確認しただけでも2020年はノーザンファームから43頭、社台ファームから12頭がデビューを控えています。他の産駒も有力牧場の名前がならび期待の高さがうかがえます。
まずどういった産駒が出てくるのかということですが、初年度(ここ重要)はやや成功と見ます。
個人的に一年目の成績はオルフェーヴル以上ジャスタウェイ未満ぐらいの線かな?と思いますが、順位としては初年度60位前後といったところでしょうか。
その根拠をあげていくと、まず最初にスクリーンヒーローやグラスワンダーの系統にどうしてもサンデーサイレンス系ほどの安定感がない点です。加えてモーリスの母系がサドラーズウェルズ産駒のカーネギーにモガミという配合で、気性面で相当うるさい産駒が出てきそうで、このあたりが出世を妨げそうな感じがします。
次はやはりモーリス自身が晩成だったという点です。父系も含めて血統的にも完全に仕上がりの遅いタイプなので三歳の秋以降が勝負だと思います。若いうちは勝ちあがっても重賞で跳ね返される産駒が出てきそうです。
三点目は分かりやすいスピードの血がないのが一番の懸念事項です。モーリス自身はマイルGⅠを四勝したスーパーマイラーですが、本質的には2000m以上でこそのタイプであり、欧州型のパワーが要求される馬場のほうがいいタイプです。
そういった意味では母系にはスピードのある血が活躍のためのポイントだと考えられます。
このように非常に懸念事項が多い種牡馬なので、どれもこれも走るというよりもポーンと大物が出てくることが予想されます。
おそらく産駒は瞬発力勝負には強くないとは思うので、東京や新潟以外の競馬場のほうが合うと思いますし、能力の高さを活かしてダートでいくらか勝ち上がってくるのではないのでしょうか。距離的にも1600m以上のほうがよく、ベストは2000mあたりでしょう。
逆に東京コースや短い距離で高いパフォーマンスを見せる馬は相当能力が高いと思うので、今後大物になる馬の判断材料になりそうです。
二歳戦向きではないので、最初は温かく見守ったほうがいいと思いますし、新馬戦あたりで人気をしていると避けたほうがいいでしょう。
安定感の面ではオルフェーヴル産駒よりはあると思いますが、あくまで若いうちはあまり信用し過ぎないほうがいいと思います。
大型馬は特に気を付けたほうがいいとは思いますが、逆に早い段階から走る馬は気が強いタイプが多いでしょうね。ダートはある程度こなせると思うので新馬戦で負けた後のダート替わりは狙えるかもしれません。
どうしても血統的に重たいので、将来的にはハービンジャーぐらい成功したらいいかな?と思っていますが、はたしてどうなることやら・・・。
ドゥラメンテ
父:キングカメハメハ 母の父:サンデーサイレンス
繋養先:社台スタリオンステーション
ルーラーシップの上位互換として期待
2020年の個人的な大本命はこのドゥラメンテと見ます。
繋養先の社台SSも手ごたえを感じているのか、初年度(2017年)に400万円だった種付け料は徐々にあがり2020年は700万円となっています。
モーリスは400万円のままなので、よっぽどいい形の馬が出てきたことが予想されますが、さすが安心のエアグルーヴブランドという感じがします。叔父にあたるルーラーシップが種牡馬としてすでに成功していることもあり、失敗はまずないのではないのでしょうか。
競走馬としてもGⅠは皐月賞と日本ダービーの二勝だけながら、底を見せないまま引退しているのも魅力であり、またフロックでは勝てないダービーを勝っているという実績は買えます。
またルーラーシップとの比較ではサンデーサイレンスの血が入っているというのも魅力であり、ルーラーシップより短い距離にも対応できるはずで距離やダートに関してもある程度汎用性を見せることが予想されます。
初年度産の馬は200頭近くが控えており、ノーザンファーム産が約35頭、社台ファーム系が20頭近くおりクラシック戦線はとりあえずモーリスよりもドゥラメンテのほうが結果を残すのは間違いないと思われます。
初年度から超大物を出してくる可能性もあります。
色々な意味でバランスの取れた血統構成で将来のリーディング候補の一頭ですね。
新馬戦からどんどん勝ち上がってくるとは思いますが、弱点は決して仕上がりの早いタイプではないので、やっぱりデビュー戦はコロッと負ける可能性があることでしょうか。
とありあえずルーラーシップの上位版の捉え方が無難だと思いますし、一度の敗戦で見限るタイプでもないと思います。
アジアエクスプレス
父:ヘニーヒューズ 母の父:Running Stag(カロ系)
繋養先:優駿スタリオンステーション
ヘニーヒューズの代替機として期待
実績としては朝日杯FSを勝った実績というよりもダート馬のイメージが強いアジアエクスプレスですが、初年度産駒は120頭近くいるようです。
アジアエクスプレス自身の牝系一流なのは魅力で、何頭かノーザンファーム産の馬もいるのですが問題は種付け料が初年度80万円だったということでやはり全体的な質という面では、いきなりのスタートダッシュという点では厳しそうな感じがします。
ただ芝のGⅠを勝っていることや皐月賞でも6着来ているなど芝向きのスピードを持ち合わせているのは魅力で、ヘニーヒューズの後継種牡馬として徐々に順位や種付け料が上がってくる可能性はありますね。
二歳戦から勝負してくる血統ですが、Cozzeneの血も入っているので芝でも勝ち負けするな馬が出てくると重賞でも面白いかもしれません。
やっぱり狙い目はダートの1000~1200mの未勝利戦や1勝クラスでしょうか。
意外とやるかもしれませんが、最近似たような血統の馬が多数おりそのあたりとの兼ね合いでしょうね。
リオンディーズ
父:キングカメハメハ 母の父;スペシャルウィーク
繋養先:ブリーダーズスタリオンステーション
一年目から結果を残さないと厳しそう
母シーザリオは同馬の他にエピファネイアやサートゥルナーリアを送り出しており、血統は超一流です。
それを証明するかのように二歳GⅠを勝利したのみながら初年度の種付け料は200万円のスタートと強気の価格設定でした(2020年は250万円)。
繋養先がブリーダーズSSというところは若干引かかりますが、140頭近くがデビューを控え、ノーザンファーム産の馬も十五頭程度いるので意外と頭数は揃います。こういったタイプは初年度からいかに活躍馬を送り出すかがポイントですが、血統的ポテンシャルをどこまで爆発できるでしょうか。
懸念事項としてはキングカメハメハの系統やシーザリオの子供たちは気が強いので、このあたりが悪いほうに出なければいいかなと思います。
母の父スペシャルウィークは大物を出す半面当たりはずれが大きいタイプなので、突然重賞を勝つ馬を出す可能性がありますが、現実的にはローズキングダムのようにスピードのある馬が出世はするものの、上の条件で跳ね返されような形になるのではないでしょうか。
クリエーター(Creator Ⅱ)
父:Tapit 母の父:Privately Held(Damascus系)
繋養先:日本軽種牡馬協会静内種牡馬場
アメリカの生産されアメリカで走った馬で輸入種牡馬となりますが、僕が競馬をはじめた頃も同じ名前の種牡馬がいましたね。
2016年のベルモントSの勝ち馬ですが、引退後そのまま日本に輸入されています。2017年の種付け料は200万円(2020年も同じ)。
2018年産は50数頭いるようですが繋養先が日本軽種牡馬協会なので牝馬の質があまり高くないみたいです。
母系はペルーの馬でおそらくこのあたりも影響して日本に来たと考えられますが、父がタピットでベルモントSの勝ち馬というのは正直なところ個人的にはあまり魅力は感じません。
かなり気性が激しい父系なのでこのあたりは産駒にはっきりと伝わるはずで、母系も完全にダート向きなので、どうしても単純なスピード勝負になると分が悪そうです。
血統的な印象としてはタフでパワフルな配合なので地方競馬向きなんじゃないのかなと感じますね。
中央では非常に苦戦するのではないかと思います。
ディスクリートキャット(Discreet Cat)
父:Forestry 母の父:Private Account(Damascus系)
繋養先:ダーレー・ジャパン・スタリオン・コンプレックス
UAEやアメリカで走った馬で輸入種牡馬となります。種付け料は2017年から現在まで150万円で変わらず。
2011年にアメリカで産駒がデビューしたあと2017年から日本に輸入されていますが、アメリカでは50位前後をウロウロしていた中堅種牡馬で輸入されるころには種付け料が7500ドルまで落ちています
血統はストームキャット系のフォレストリーにダマスカス産駒のプライベートアカウントという配合で完全にパワー型のダート配合です。
世界的に名血を揃えるゴドルフィングループで繋養されているので侮れないところですが、2020年にデビューを予定しているラインナップを見ていると百頭近くはいるものの、質よりも量に頼っているという印象は感じます。ダーレーの生産馬も五頭しかいません。
これまでのアメリカの産駒を見ると決して大成功しているとは言えず、アメリカで失敗して日本に来て大成功するとは考えにくいですね。
あくまで下級条件、特にダートの短距離で賞金を積み上げていくタイプになりそうです。
マクフィ(Makfi)
父:Dubawi 母の父:Green Desert
繋養先:日本軽種牡馬協会
イギリス産でフランスで走った輸入種牡馬です。
父がヨーロッパでガリレオに次ぐ成績を残すトップ種牡馬のドゥバウィであり、最近では珍しいヨーロッパ型のマイラーです。現役時代は英2000ギニーとジャック・ル・マロワ賞を制しており一流の競走馬として活躍しました。
2011年にフランスで種牡馬入りしたあと2017年に輸入されていますが、GⅠホースを二頭出しているもののヨーロッパのローカル種牡馬だったようです。
2018年生まれは百頭近くいるようですが、やはり日本軽種牡馬協会で供用されていることもあり、種付け料は220万円と決して低くはないものの牝馬の質はそれほど高くないような気がします。
あくまで零細牧場の繁殖牝馬にスピードのある血を入れるような意味合いもあるのではないのでしょうか。個人的にはドゥバウィの系統はフィリーサイアーとして華が開くのではないかと予想しています。
産駒の予想としてはおそらく日本のパンパンの良馬場に向いているとは思えず、ローカルなどのマイル~1800m前後の忙しいレースのほうがいいような気がします。あとは芝で勝ちきれずダートで勝ち上がってくる馬も出てくるのではないのでしょうか。
上級馬が出てくるとすれば、スプリント系の血をちつつ、母の父あたりに底力とスタミナのあるどっしりとした血がほしいところですね。
エイシンヒカリ
父:ディープインパクト 母の父:Storm Cat
繋養先:レックススタッド
さて、問題のエイシンヒカリです(笑)。
やはりディープインパクト産駒の中ではひと際異彩を放つ一頭です。どちらかと言えば鋭い差しが持ち味であり、成長のピークが春のクラッシックの馬が多い中での、晩成型の逃げ馬ということで”らしからぬ”ディープインパクト産駒と言えます。
現役時代は国内GⅠは勝っていませんが、香港とフランスでGⅠをそれぞれ勝利しています。
現役引退後はレックススタッドで種牡馬入り。初年度は強気の300万円で種付けをスタートしていますが初年度産駒は53頭しかいないようです。しかもそのうちの二十頭近くが、馬主をつとめた栄進堂の栄進牧場の生産馬なので現場としてはあまり種牡馬としては評価されていないようです。
栄進牧場としても自分たちのもっていた馬なので気合も入るところなんでしょうが、種牡馬としての可能性はやはり厳しいことが予想されます。
ディープインパクトにストームキャットという配合は黄金配合と呼べる配合ですが、その先はカロ、キートゥーザミント、シーバードと言った底力型の血があり、とんでもない大物が出てきそうな半面、軽さには欠けるので当たりはずれは大きいタイプになってくるとは思います。まさしくエイシンヒカリの成績そのままになりそうです。
また厳しい理由としてはエイシンヒカリ自身が体質的に弱くデビューが遅くなったことからも仕上がりは遅いタイプになると思われます。となると種牡馬としての重要なお披露目の機会となる初年度の結果も出遅れるでしょうから、成績が上がり始めたころにはすでに飽きられている可能性があり、ビジネス的に心配です。
配合的には、短距離をこなす馬もでてくるでしょうが、やはりマイルより少し長い距離のほうがが合うと思いますが、まず初年度から狙うとしたら栄進牧場の生産馬でしょうか。
新馬戦でマイルを勝つような馬が出てくると面白いとは思うのですがはたしてどうなることでしょう。
2017年に300万円だった種付け料は翌年には250万年、2020年には160万円まで下がっているそうです。
うーん厳しいか・・・。
ミッキーアイル
父:ディープインパクト 母の父:ロックオブジブラルタル
繋養先:社台スタリオンステーション
オーストラリア産から活躍馬が出そう
ディープインパクト産の快速馬として知られたミッキーアイルですが、意外と言っては失礼かもしれませんが社台SSで種牡馬生活を送っています。
2017年から種付け料は150万円のまま据え置かれていますが、ディープインパクト産駒にしては珍しくスプリントGⅠで勝ち負けしていた馬なのでこのあたりのスピードが買われてのことでしょう。
母の父は短距離戦で実績のありヨーロッパだけでなく南半球でも活躍馬を送り出したロックオブジブラルタルで、このあたりの血も買われたのか2017年から三年連続オーストラリアにシャトルされているようです。また、近親にはあのアエロリットがおり、血統的なスピードもかなり高そうです。
初年度は約70頭の産駒がデビューを控えますが、ノーザンファームの馬も17頭(その他の社台ファーム系は7頭)程おり、ある程度の結果を残すのではないかと思います。
こういった気性的に前向きなタイプでスプリント戦に対応できる馬は比較的勝ち上がり率が高くなる傾向があるので、夏からどんどんか違ってくることも考えられます。
ただ反面ロックオブジブラルタルのようなデインヒル系のオーストラリアに合う血統は瞬発力というよりもスピードの持続力で勝負するタイプなので、最後の直線で違い見せるというよりも流れ込むタイプなので、クラスが上がって善戦はするけど勝ちきれないというタイプが多くなるような気がします。
狙うとすればやはり新馬戦や未勝利戦、1勝クラスであり、早い時期から勝負できると思います。逆に重賞になると人気馬は信用しにくいなと思います。
オーストラリアに毎年シャトルに出されているようなので、もしかしたら南半球の馬が先に重賞を勝つということも十分ありえるでしょう。間違いなくオーストラリアには合うと思います。
ホッコータルマエ
父:キングカメハメハ 母の父:Cherokee Run(Blushing Groom系)
繋養先:優駿スタリオンステーション・イーストスタッド(二年おきの国内シャトル)
地方向きで馬格のある馬を狙いたい
ダートで10億円近くを稼いだ同馬ですが、初年度はなんと約110頭がデビューを待ちます。
父キングカメハメハというブランド力もあったでしょうが、120万円という種付け料の割にはよくこんなに牝馬が集まったなという印象です。
ただ生産牧場のラインナップを見ているとあまり大舞台で名前を聞かないような牧場が多く、地方で走る馬が多く出てくるのではないのでしょうか。
血統上は若干バランス型で、悪い言い方をすると中途半端な印象です。こういったタイプはスピードや底力が特別あるわけではなく、恐らく馬格などで勝負するタイプになるような気がしますね。
どうしても中央では苦戦するでしょうし、やはり主戦場はダートでしょう。